長引く咳

咳(せき)はウイルスによる風邪の代表的な症状の一つですが、多くの場合は3週間以内に改善します。ところが最近は、咳止めが効かず、肺炎や気管支炎などはっきりした異常がない、4週間以上の長引く咳に悩まされている方が増えています。

このような咳は、耳鼻咽喉科疾患やアレルギー性疾患などによっても引き起こされる症状であり、その咳の症状や随伴する症状によって原因疾患を推測できる場合があります。ここではそれらの疾患についてお話したいと思います。

痰(たん)のからんだ湿った咳の場合は「後鼻漏(こうびろう)症候群」が考えられます。後鼻漏とは、鼻汁が鼻の後ろを通ってのどに流れ落ちる状態を言います。落ちた鼻汁がのどを刺激することで、咳やのどの違和感を引き起こします。多くの場合は鼻汁がのどに流れる感じを伴いますが、自覚の無い場合もあります。

後鼻漏の原因疾患としては、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)が最も多く、その他に慢性鼻炎やアレルギー性鼻炎が挙げられます。これらの疾患には、鼻汁や鼻づまりなどの症状を伴うことが多いですが、全く鼻の症状が無い場合もあります。

咳のからまない乾いた咳で、のどが痒(かゆ)く、イガイガする場合は「喉頭アレルギー」が考えられます。アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息(ぜんそく)などを持つアトピー素因の方の中には、のどにもアレルギー反応を起こす方がいます。

多くの場合、咳の他にのどの違和感や閉塞(へいそく)感を伴います。喉頭アレルギーは花粉症の症状としてもみられますが、そうでない場合は、他のアトピー素因と関連した疾患(咳喘息、アトピー咳嗽など)との鑑別が難しい場合があります。

乾いた咳で、胸焼けやゲップなどを伴う場合は「胃食道逆流症」が考えられます。胃酸などの胃の内容物が食道に逆流し、咳の原因になります。胃の内容物が直接のどを刺激する場合は、のどの違和感や声がなどの症状を伴うこともあります。胃酸の産生を抑える薬が有効であり、診断を兼ねて治療に用いる場合があります。

いずれの疾患も適切な治療により治癒可能であり、そのためには鼻やのどなどの診察や検査が必要です。頑固で長引く咳に対して、単に風邪を操り返しているだけだろうと決めつけず、専門医に相談することをお勧めします。

[荻野 武,おぎの耳鼻咽喉科・アレルギー科クリニック]


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