新型インフルエンザ

今年4月から室蘭市医師会の感染症担当になりました野尻です。新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)が3月下旬にメキシコを中心に発生し、アメリカ、カナダを中心にほぼ全世界に蔓延し、6月12日にWHOがフェーズ6を宣言。感染状況は7月3日まで120カ国9万9921人(死亡数429人)となっています。

一方、日本では5月10日に成田空港の検疫にて4人が確認され、厚生労働省は海外発生早期として水際対策(検疫体制)にて対応。その後、5月16日に神戸で国内感染者が初めて確認され国内発生早期として対応。その後、神戸、大阪を中心に全国に拡大し、7月22日現在、(感染者100人以上は北海道、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県)4433人(死亡数0人)となっています。北海道でも札幌、旭川を中心に現在までに124人の感染が確認され(7月5日現在)、胆振西部地域においても2人の感染が確認されました。

 一方、その治療の対応ですが、当初は各保健所に設置された発熱相談センターと各地域の医療機関に設置された発熱外来での対応となっていました。しかし、神戸と大阪の感染者発生増加を受け、5月22日、政府は感染の初期患者発生が少数であり、感染拡大防止に努める地域と急速な患者数の増加が見られ、重症化の防止に重点を置く地域に分けての対応となりました。しかし、感染者の更なる増加、各医療機関の疲弊、混乱等、またWHOのフェーズ6宣言を考慮し、6月19日に2つのグループ分けを廃止しました。

今後の対応ですが、まだまだ感染は終息しておらず今秋の第2波に向けて注意深く見守る必要があります。急性の呼吸器症状(咳、痰、発熱等)や咽頭痛等のインフルエンザ症状が出現した場合は、まずかかりつけの医師がいる場合は電話で問い合わせて、受診時間等の指示に従います。医療機関は診療が行えるかどうか判断し、困難なときは発熱外来を有する医療機関へ紹介します。かかりつけ医師がいない場合は、発熱相談センター(電話0143・24局9843番)へ相談し、受診可能な医療機関を紹介してもらいます。原則としてすべての医療機関で発熱患者の診療を行うこととなっています。受診後は原則として外出自粛・自宅療養をお願いします。

また、妊婦、幼児、高齢者や慢性呼吸器疾患・慢性心疾患・代謝性疾患(糖尿病等)・腎機能障害・免疫機能不全(ステロイド全身投与等)等を有しているものは重症化のリスクが高いと言われているので、主治医と十分に相談をお願いします。

いずれにせよ、新型インフルエンザの毒性については、季節性インフルエンザとあまり変わらず、タミフル、リレンザで十分な効果が得られています。インフルエンザ様症状が見られた場合は、あせらず医療機関に電話連絡の上、咳エチケットを守り、マスクをして来院してください。

[野尻秀一,野尻内科消化器科クリニック]


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