認知症の早期介入ともの忘れ外来

わが国の65歳以上の認知症高齢者数は、2015年には300万人となり、2035年には400万人に達すると推計されています。

 誰でも年をとると、ものをつい置き忘れて探し回ったり、顔を思い出しているのにその人の名前が出てこなかったり、といったもの忘れを経験します。そのため、これらを正常な老化の過程でみられるもの忘れと、認知症によるもの忘れは区別可能なのか問題になります。認知症のもの忘れと正常な老化とは連続性があるため、ごく初期の段階で区別は難しく、初期から中期へと進行すれば両者の区別は可能となります。

 そこでもっと早期に認知症や予備軍を選別し、治療や予防的介入をする目的で軽度認知機能障害(MCI)という病態が注目されています。このMCIとは、もの忘れや何らかの認知障害は認めるが、それが日常生活に重大な支障を及ぼすほどでない状態で、頻度は、65歳以上の高齢者の3〜5%で、認知症への転換率は年間16.1%であったと報告されています。

 このように、早期に認知症の予防的介入が重要で、専門医療機関で実施されている「もの忘れ外来」等が初期の窓口となります。もの忘れ外来を受診する認知症高齢者の大半は、アルツハイマー型認知症であり、MCI、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などが、これに次いで頻度が高くなります。

基本的な役割は、第一にそのもの忘れが、認知症であるか否かを判定すること、第二に認知症である場合、その原因となる脳の器質的疾患が、何であるかを判定すること、第三に固定された認知症疾患の病態や障害の性質に応じて治療とケアを計画し、地域のさまざまな社会資源とつながりをもちながら、その人を支えるネットワークづくりを進めていくことであります。

 もの忘れの自覚が続くようでしたら、気軽に「もの忘れ外来」への受診をお勧めします。

[千葉泰二,三愛病院院長]


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