COPD 慢性閉塞性肺疾患について

慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)は、直接タバコの煙などの有害物質を吸い込むことによって気管支と肺に炎症が起きる疾患で、一般的な病名として肺気腫や慢性気管支炎が含まれます。初期症状は咳(せき)・痰(たん)で、階段の上り下りの際に息切れするなどの症状が繰り返して起こります。

初期の段階で呼吸機能検査を受けることが重要ですが、ありふれた症状であるため見過ごされやすく、風邪や喘息(ぜんそく)など他の疾患と間違われること、あるいは「年のせい」などとして片付けられていることが多くあり、重症化してから症状を訴えられることがあります。

2001年に行われた全国的な疫学調査によると、40歳以上の8.5%(約530万人)がこの病気に罹患していると推定されました。

しかし、実際に治療を受けている患者さんは、厚生労働省の統計によると22万人といわれており、およそ10%程度しか治療を受けていない状況です。死亡者数は1960年の約2,500人から増加をはじめ、2007年には喘息死の約6倍である約15,000人でした。

安定期のCOPD管理では、禁煙、および冬期のインフルエンザワクチン投与による感染予防のほか、長時間作用性抗コリン薬やβ2刺激薬/吸入ステロイド配合剤などの気管支拡張作用をもつ吸入剤が、気流閉塞の進行や死亡率を抑制する可能性があるとされており、症状の程度から総合的に判断したうえで治療が可能です。

喫煙の継続や風邪、肺炎などに罹患してしまうと、呼吸機能の悪化を早めることにつながり、重症化すると呼吸による血中の酸素濃度維持が困難となり、酸素濃縮器などで足りない酸素を補う在宅酸素療法などの補助療法が必要となってきます。

COPDは稀な疾患ではなく、放置すると将来的に日常生活が大幅に制限されるため、喫煙歴があり、体動時の呼吸困難、慢性の咳、痰のある方は一度早めの検査をお勧めします。

[佐原 伸,さはら呼吸器内科クリニック]


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