インスリン

インスリンとインスリン抵抗性についてお話します。インスリンとは胃の後ろにある「すい臓」という臓器でつくられる、体の中で唯一、血糖を下げる働きをもつホルモンです。

 すい臓の中でインスリンを作っている細胞は「ランゲルハンス島のβ細胞」です。β細胞の働きが悪くなったり、何らかの理由でβ細胞が壊れてしまったりするとインスリンは減少したり、全く作られなくなったりします。すると血糖値が下がらなくなり、糖尿病になります。

 また、インスリンが十分にある場合でもインスリン抵抗性があると、インスリンが十分働くことができなくなり、やはり血糖値が上がって糖尿病になります。

 インスリン抵抗性とは体の中でインスリンが働きにくくなった状態です。インスリンには血中のブドウ糖を筋肉や肝臓などの細胞の中へ取り込ませる働きがあり、これによって血液中のブドウ糖が減る、つまり血糖が下がるのです。しかし、インスリン抵抗性があるとインスリンが効きにくくなり、血糖を下げる働きが弱くなります。

 インスリン抵抗性は2型糖尿病の発症と特に深いかかわりがあると考えられています。初期は、すい臓のβ細胞がインスリンを大量生産して働きが弱くなった分を補おうとするのですが、だんだんβ細胞も疲れてきてインスリンの分泌量が減ってきます。すると血糖が下がらなくなり、糖尿病が発症すると考えられています。

 インスリン抵抗性の発症原因には、遺伝に加えて過食、運動不足、肥満などの悪い生活習慣が関与しているといわれています。

[國本清治,くにもと内科循環器科院長]


目次に戻る

Copyright (C) 1998 by Muroran Medical Association. All rights reserved.