平熱と発熱

インフルエンザの流行は下火になったようですが、まだ高熱で顔を真っ赤にして受診される患者さんがいます。体温は最も簡便に測定できる身体情報ですので、体温の常識について学んでみましょう。

 日本人の平熱は案外高めで36.9度だそうです。電子体温計には予測式と実測式があり、実測式だと測定完了まで約10分かかります。早く体温計を抜いてしまうと上がりきらずに低めの体温が表示されますので、説明書を読み直し正しい測定をしましょう。

 その他、体温はいろいろなことで上下します。まず、日内変動。通常午前2〜4時ごろに最も低く、午後4時前後に最も高くなります。1度くらい上下することもあるそうです。ほかにも気温、食事、運動、年齢、性別などによって影響を受けますので、自分の平熱がどのくらいなのか朝昼夕晩の一日4回、何回か測ってみると良いでしょう。

 次に病気の熱についてです。熱が出る病気で最も身近なのはいわゆる風邪のたぐいですので、風邪の熱について書いておきましょう。

 一般的に風邪の原因はウイルスです。ウイルスが体に感染すると体は免疫力を高めるため発熱します。体温が上がるのはウイルスを追い出すのに有利だからです。解熱剤で熱を下げると、むしろ風邪の治りが悪いという報告はいくつもあります。

 ですので、体が特につらくなければ解熱剤を使う必要はなく、水分の補給と安静で様子を見て良いと思われます。もちろん、極端な高熱や頭痛、ひきつけを起こしやすい場合、脱水、ウイルス以外の感染、その他持病がある場合などを除きます。心配な時は診察を受けてください。

 一方で風邪の発熱でも非常に体がつらいことがあります。熱による苦痛には個人差がありますが、平熱より明らかに熱が高く、倦怠(けんたい)感、関節痛など熱による苦痛が強い場合は、解熱剤を使ったほうが楽です。状況に応じて使ってください。上手に体温の知識を使って早く風邪を治しましょう。

[鈴木啓弘,鈴木内科院長]


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