肛門を守るための日常の注意

 肛門の病気は大きく分けて痔核(いぼぢ)、裂肛(切れぢ)、痔瘻(化膿)に分類されます。これらの病気から肛門を守る基本は快食、快眠、快便ですが、排便は特に重要です。予防が一番効果を発揮するのが痔核です。うっ血しないようにすることが大事ですので、いい便をきちっと、規則正しく出すというのが基本です。

 今の社会は忙しくて時間に追われ、朝寝坊になるから朝食をきちんと取らない。したがって便がちゃんと出ないという悪循環がおこりがちです。十分に睡眠をとり、朝少し早く起きて食事をとるというパターンが排便を規則正しくさせる基本的リズムです。

 便秘が痔にとって悪いというのは、便秘の人はどうしてもトイレの時間が長く、腹圧をかけて力んで出す。この「力み」が原因といわれています。実は腹腔内圧を測った人がありますが、そのデータによると「力み」というのは水銀柱200mmくらいになるのだそうです。こういう腹圧をかけて30分もやっていたらそれだけで局所はうっ血します。要するに腹圧をあまりかけないような排便習慣を身につけることです。

 そこで食事が問題になります。便秘がちの人はなるべく便を硬くしないことが基本ですから、水分をよくとることが大切です。また野菜については繊維の多いものを食べるようにしましょう。パン食よりもお米、麦等の穀類、いも、ごぼう、にんじん、リンゴ、海草類も良いといわれています。酒も悪くはありませんが、飲みすぎると骨盤内の血液量が増えてうっ血し、下痢をおこすことが多いので飲む量に注意してください。

 最後に痔核がはれたらお風呂が一番効果があります。お尻の清潔も含め、お風呂に何回もゆっくりつかっていれば、たいがいのものは良くなります。でも化膿した痔瘻には禁忌ですので、お風呂が全ての肛門の病気の予防にならないことも覚えておきましょう。

[斎藤 修弥,斎藤外科病院院長]

 


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