眠れない人のために

 一晩や二晩眠れなかった経験は、誰もがお持ちだろうと思います。居間でテレビを見ていると眠気がさすのに、布団に入ると頭が冴えて寝付かれなかったり、寝付いてもすぐ目が醒めたり、予定の時間より早く起きてしまったりして、不眠は大変つらいものです。

 人間は一日にどのくらい眠っているのでしょう。新生児期から小児期までは、昼間にも睡眠をとる多相性睡眠のパターンをとり、10時間以上に及ぶことがあります。

 思春期から成人になると、夜だけ眠る単相性のパターンをとり、8時間前後となりますが、40才を過ぎると睡眠時間が減少したり、逆に増加して多相性を示すものもあり、個人差が大きくなるといわれています。つまり、加齢とともに変化するものなのです。

 睡眠障害のことを一口に「眠れない」と表現しますが、寝付きが悪い場合、途中で何度も覚醒する場合、普段より早く覚醒し睡眠時間が短くなる場合等があります。また、原因もその障害の程度が軽いのに自覚的評価の強い場合、神経症のように心理的、環境要因による場合、精神分裂病、うつ病、躁病のような精神疾患による場合、及び心不全、甲状腺機能障害のように身体的基礎疾患のある場合等いろいろ考えられますが、一般的にはこれら基礎疾患の治療と並行して、睡眠導入剤が使われます。

 ベンゾジアゼピン誘導体の薬剤が主流ですが、作用時間の短い薬剤から長い薬剤まで種々ありますから、睡眠障害の種類と程度に合わせて、かかりつけの主治医と相談して服用されることをおすすめします。指示通り服用すると、決して恐ろしい薬剤ではありません。

 睡眠の役割は、一日の疲れを取り除き、明日への活動の準備をすることです。不眠ぐらいと思わずに、軽いうちに専門医に相談することが必要です。

[ 遠藤 秀雄,医療法人社団友愛会恵愛病院長 ]

 


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