環境ホルモンについて

 今や世界的に問題となっている環境ホルモンとは、人間が造り出した多くの化学物質の中に含まれている。生物の各種ホルモンと非常によく似た疑似的な作用を生体に及ぼす物質で、内分泌撹乱化学物質ともいわれ、日常我々の生活する周辺にはどこにでも多数存在する。

 代表的なものにDDTPCB、ダイオキシンなどの化学物質がある。生物がこれらの物質をその発生時に浴びたり、長期的に浴びたりすると、内分泌系、免疫系、神経系などに様々な形で異常を起こすことが分かってきた。

 化学物質による環境汚染と健康被害は、今に始まったことではない。1960年代に農薬や工業排水による汚染は深刻な問題を起こした。例えば、ダイオキシンやカドミウムは、これまで発癌性や急性毒性ばかりに焦点が当てられてきたが、見方を変えれば、実際には典型的な内分泌撹乱物質であった。

 最近になってようやく環境中の物質がホルモン様作用や、ホルモン阻害作用を示すことが分かってきたのである。今までの化学物質汚染も、もう一度「環境ホルモン」問題として見直す必要があるのではないか。

 さらに恐ろしいのは、日本という国は世界でも稀なほど、ダイオキシンに汚染されているといわれている。

 人間では母体より胎児に、母乳より乳児に環境ホルモンが移行し、胎児の奇形、精子の減少、生殖異常、子宮内膜症、乳癌、前立腺癌など異常現象が多く見られるようになってきた。

 また、少年、少女のいわゆる「キレる」現象と「環境ホルモン」との間にも、関連があるのではないかと指摘する学者もいる。

 環境ホルモンとは、これほど怖いものでありながら、現代の便利な生活に馴れきって、あまりにも我々の日常生活の中に入り込んでいる。それが環境ホルモンの恐ろしさである。

 プラスチックに環境ホルモンが含まれていると知ったら、恐らくショックであろう。カップ麺、缶類、食品用容器、ほ乳瓶などプラスチック製のものが多い。

 さらに、ラップに包んで食品を加熱することは、ラップに含まれる有害物質が熱により食品に移り、それが体内に取り込まれることになる。

 最近の新聞にある学校給食のプラスチック容器を全廃するとの記事が出ていたが、時宜を得たものと思われる。

 アメリカでは、多くの化学物質を環境ホルモンか否かを2、3年間で調べ上げるという計画が進んでいるという。しかし環境ホルモンの種類や影響はまだまだつかみきれていないのが現実で、推測による所が多い。

 いたずらにパニックになることなく、大事なのは脱化学物質に努め、生活を見直して、変えられるところから変えていけばいいのである。

[ 開田 吉広,開田医院 ] 

 


目次に戻る

Copyright (C) 1998 by Muroran Medical Association. All rights reserved.