自然食ブームとともに生食によって回虫症・鉤虫症(こうちゅうしょう)も時々見掛けるが、夕食に刺身で一杯──。日常よくある光景。
しかし、夜中に突然、おなかを引き裂かれるような痛みを発症するアニサキス症は、魚肉の中に隠れていたアニサキス幼虫が、人間の胃の中で消化されまいとして胃壁や腸壁に穿入(せんにゅう)して発症します。
大きく分けて急性胃アニサキス症は、生の魚介類を食べて2〜8時間後、急激な心窩部(しんかぶ)痛、悪心、嘔吐を来たし、急性腸アニサキス症では魚介類生食後、数時間から十数時間を経て激しい下腹部痛を来たします。
一説には、400種の海の魚に寄生しているといわれています。特に北日本の海域の魚に多く、タラ、マス(100%)、ニシン(77%)、サバ(81%)、アジ(51%)、カツオ(33%)、八角、オヒョウ等々、刺身の食材や酢漬け、タラコ、イクラ、などに多く寄生しています。
急性胃アニサキス症では、胃潰瘍、胆石症類似の症状を示し、腸においては虫垂炎、腸閉塞のような症状を呈します。しかし、これらの線虫は元来、クジラ、イルカ、アザラシなどが固有宿主で、人間の胃や腸に穿入した幼虫は、人間に寄生して卵を産むことはできません。
とにかく、刺身を食べて夜中から激痛に見舞われたときは、胃カメラでの虫体摘出が一番です。
自衛手段としては、魚の内臓は速やかに除去し、冷凍する刺身は薄く切るのもよいでしょう。
一方、無鉤条虫症では虫体が大きく、1〜2メートルくらいに達するものもありますが、割合症状は少なく、時に腹痛、悪心、便中不整など消化器障害をみる程度で、便中に虫体がでてびっくりして持参する人も多い。
今回は外来患者(腹痛)中の寄生虫の話をいたしました。
[ 神島 章,かみしま内科 ]
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