過敏性腸症候群
〜腸は口ほどに物を言う〜

 緊張すると下痢になる、あるいは枕が変ると便が出ない───。このような経験はありませんか。人は緊張や不安、興奮により顔色が変ったり、汗をかいたり、震えたり、体にさまざまな変化を起こします。
 同じようにおなかにもいろいろな症状が現れます。心配で心配で胃が痛くなるという方も多いと思いますが、冒頭のような便通異常もよくみられます。
 このような便通異常が日常的・慢性的、あるいは反復性に続いている状態を「過敏性腸症候群」といい、不安・緊張・ストレスなどが原因となる全身症状の一つと考えられています。

 過敏性腸症候群には3つのタイプがあります。

1)便秘型

コロコロしたウサギの糞のような硬く出にくい便で、腹痛や残便感を伴い、女性に多く見られるタイプです。

2)下痢型

軟便・水様便、時に粘液便が頻回するタイプで、男性に多く見られます。

3)便秘・下痢交代型

便秘をしたり、下痢をしたり、交互に繰り返すタイプ。

 いずれのタイプもおなかの中央から下腹部にかけての痛みを伴い、排便により軽減する傾向があります。また、おなかが張る、 ごろごろ鳴る、オナラが多い、ゲップが出るなどの症状のほか、頭痛・動悸・肩凝り・不眠・倦怠感・イライラ・落ち込みなどの神経症状を伴うこともあります。
 このようにいろいろな症状で悩んでいても、便の検査や腸のバリウム検査、内視鏡検査でも腸そのものに異常は見つかりません。腸の運動を調節する自律神経が過敏なために 腸の動きや働きのリズムがちょっと狂っているだけなのです。
 治療は、まず食事や運動、睡眠など日常生活の見直しから始め、生活のリズムを守り、規則正しい排便習慣を身に付けるように心掛けます。
 仕事や勉強からほんの少し気分転換を図り、心身をリラックスさせることが大切です。冷たい飲み物やアルコール・香辛料や刺激の強い食品の取り過ぎを避け、食物繊維を多く含む食事を心掛けるとよいでしょう。
 いたずらに鎮痛剤、下剤、下痢止めなどに頼らないほうが無難です。胃腸の運動を調節する薬や自律神経系の薬、軽い精神安定剤も効果的です。
 多少の便通異常を過度に気にしないことが大事ですが、症状が長引く場合は、他の病気を除外する上でも医師にご相談ください。

[ 開田 博之,開田医院副院長 ] 

 


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