胆嚢ポリープと言われたら

 胆嚢(たんのう)のポリープが簡単に発見されるようになったのは、エコー検査(超音波診断法)が普及するようになってからです。エコー検査とは音を使って人間の体の断層像を得る検査法で、探触子を体表に当てるだけで人体内部の構造が明瞭(りょう)に描出されます。エコー検査はレントゲンと異なり、人体への悪影響はほとんどありませんし、痛みもありません。
健診や人間ドックにこのエコー検査が取り入れられるようになり、最近では被験者の4、5%に胆嚢ポリープが発見されるそうです。
このポリープという言葉は便利なのですが、あまり明確な医学用語ではありません。隆起しているものといった程度の理解でよいと思うのですが、隆起しているものはポリープだけではありません。胆嚢癌(がん)との鑑別が大事になります。
胆嚢壁に3_程度の隆起があればエコー検査で発見できます。実際、たくさんの方が胆嚢ポリープの精密検査を受けるように、という指示を受け、医療機関を訪れます。
胃や大腸の病気であれば、内視鏡を使って指摘された病変を直接観察し、必要であればその一部を採取し、病理検査により確定診断を下すことができます。胆嚢の病気については、残念ながらおなかに穴でも開けない限り、このような直接的アプローチの方法はありません。
しかしながら、超音波画像の性状から癌が疑われる病変と良性のポリープとの鑑別はある程度です。最近の超音波診断装置は解像力が向上しただけではなく、血流を映像化することさえ可能になっています。
健診で発見されるポリープは、ほとんどが1a以下の大きさのものなのですが、これらの多くは良性の病変であり、明確に悪性を疑わせる所見が見られなければ超音波による経過の観察だけで十分です。確信が持てないときには、短期間に超音波による経過観察を繰り返します。
前述した通り、エコー検査は無痛であり安全な検査ですので、繰り返し行っても医療費のことは別として大きな問題はないからです。
数ヶ月ごとに検査を繰り返してみて、大きさや形状に変化が見られなければ、1年に1回エコー検査で確認するだけで十分でしょう。
大きさが1cmを超えるものではそろそろ癌の可能性が出てきますし、1.5cmを超えるようなものは悪性である可能性が高い、ということが最近分かってきました。
エコー検査のように無浸襲というわけにはいきませんが、内視鏡に超小型の超音波探触子を装着した超音波内視鏡による検査、造影剤を使うダイナミックCT、あるいは内視鏡による胆管胆嚢造影法などの検査を組み合わせることにより正しい診断に近づくことができます。
われわれ開業医は、悪性の疑われる場合には、さらに精密な検査を受けるようしかるべき専門科を有する総合病院に紹介します。また、治療については10年ほど前より腹腔鏡下胆嚢摘除術が行われており、早期の癌であれば以前のように開腹する必要もなくなったことは患者さんにとって大きな福音だと思います。

[斉藤 甲斐之介,若草内科クリニック]


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