所属:函館市医師会
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駒ケ岳の四季
北海道駒ケ岳は、渡島半島東部に位置する秀峰である。
「駒ケ岳」と呼ばれる山は、北海道から福井県まで、数え方にもよるが全国16箇所にみられ、最高峰は甲斐駒ケ岳の2967メートル、渡島半島の駒ケ岳は1131メートルである。
明治戊辰(1868年)の秋、榎本武揚らとともに蝦夷地を目指した旧幕臣・大鳥圭介は、10月19日(旧暦)午後、森町鷲ノ木海岸に近づいた。
甲板上から見た駒ケ岳の姿とその北麓の街を、「江山を望み、積雪山を埋め、人家も玲瓏として実に銀界の景」と表現している (写真1) 。
駒ケ岳は行政区画上、七飯町・森町(旧砂原町を含む)・鹿部町に属するが、その不思議さは、見上げる位置によって、その姿を全く異にすることにある。
このような姿になったのは江戸時代のことで、噴火で山頂付近が崩壊し、溶岩が宿野辺川の一部をせき止め、現在の大沼・小沼・蓴菜沼が出来たとされている。
森町中心部から望む右側の峰が最高峰である剣ヶ峰(1131メートル)で、左側の峰は砂原岳(1113メートル)、鹿部町側からその一部が望める隅田盛(892メートル)は奥まった所にある。
七飯町大沼湖畔から見上げる駒ケ岳の姿は、文字通り、駒(馬)が伸びやかに横たわる姿そのものである (写真2) 。
森町駒ケ岳地区からは、二頭の駒(馬)が、寄り添う姿である (写真3) 。
森町中心部からは、双峰の雄々しい姿(写真4)、旧砂原地区の西方からは大沼で見る姿を左右逆にしたような姿となり (写真5)、旧砂原地区から鹿部町にかけては、眼前いっぱいに広がる岩塊のような砂原岳の逞しい姿(写真6)、鹿部町からは、直線的に伸びる尾根に、隅田盛、剣ヶ峰、砂原岳の3つの岩峰が並ぶ特異な姿(写真7)と、一回りするとその変わり身の妙に驚く。
筆者は、1991年7月の自然公園法施行令改正を踏まえて、1998年七飯町で開催された火山防災フォーラムにおいて、駒ケ岳観光の魅力周知と登山時の防災拠点として、周遊鉄道の設置を提案した。
その提案の翌年1999年から、駒ケ岳を周遊する「マウントレイク大沼」号の運行が始まり、そして2001年からは、同じ周回経路で、SL函館大沼号の運行が開始された。
現在ではSLの車窓から、写真2~7のように移り変わる、さまざまな駒ケ岳の姿に出会うことが出来る。
函館市からも駒ケ岳が望める箇所が幾つかある。
函館山から望む姿は有名だが、旧南茅部地区から噴火湾を隔てて望む姿は、ちょうど森町から望む側の裏面の位置にあたり、噴火湾に伸ばした裾野の伸びやかさは、特に秀逸である (写真8) 。
駒ケ岳山麓への四季の訪れは、くっきりしている。
雪解けとともに辛夷の花が掌をひろげ、水芭蕉が青空の中に純白の仏炎苞を浮かばせる(写真9・10)。 森町中心部にある公園では桜の花が咲き始め、駒ケ岳をうずめる勢いで満開の時を迎える。
鯉幟をあげ、菖蒲が可憐な花をつけると農作業が本番を迎える。
水田での田植え、牧畜の飼料栽培、畑仕事も大忙しである(写真11~16)。
お盆の時期には人々の優しさのこめられた行事が行われ、紅葉の季節を経て、厳冬の時期が巡って来る (写真17~20) 。
移りゆく四季の美しさを、あますところなく映す駒ケ岳である。