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「大事なことは目に見えないんだよ。」サン・テグジュペリ
〜奇跡の言葉〜 鏡リュウジ 学習研究社


BOOKs(ミステリ)
ミステリ、しかも本格ミステリ・・・良い響きですね。
こういうミステリもお勧めです。
(順不同。どの場所に何があるかはスクロールしてのお楽しみということで。)
青文字は参考のためのジャンル分けです。内容についてはこの限りではありません。

オルファクトグラム
井上 夢人 作 毎日新聞社 (単行本)ミステリ

大怪我をきっかけにして、匂いを「見る」ことが出来るようになった青年の話です。
姉の部屋で何者かに襲われ、病院で気がついたときには姉の死を知らされたミノル。その後自分の嗅覚が変化したことに気がつく。行方不明になったバンド仲間を嗅覚を使って探すうち、ミノルは次第に姉を殺した犯人に接近していく。
たんたんと話が進む・・・。けれどもラスト近くはドキドキしますね。「Cの福音」もこんな感じのドキドキでしたね、私は。

マスグレイブ館の島
柄刀 一 作 原書房(単行本)ミステリ

サー・アーサー・コナン・ドイルの「マスグレイブ館」を再現した島と、その対岸の岬で起こる殺人事件。頑丈な牢屋で墜落死した男。食料のある部屋で餓死した男・・・。不可思議な死因ですね。直接犯は目から鱗です。
サー・アーサーの「マスグレイブ家の儀式書」はNHKで放送されたジェレミー・ブレッド主演のものでもやりました。ラストで池の表面にメイドの死体がぷ〜か〜と浮かんでくるアレです。是非、聖典もご一読を。
アガサ・クリスティーの食卓(新書)ミステリ・エッセイ
北野 佐久子 アシェット婦人画報社(新書)

アガサ・クリスティーが書いた小説に出てくる食べ物、小物などについてのエッセイ。それが出てきた小説の部分を抜き書きしてあるのが嬉しいところ。どのページからでも読めるので、寝る前の本に良いです。
鏡の女
内田 康夫 作 (文庫)ミステリ

浅見光彦シリーズです。「鏡」にまつわる短編集。
この中の「地下鉄の鏡」には札幌の地下鉄大通り駅が出てきます。・・・駅員こんなになまっているのでしょうか・・・。読んでいて一番引っかかったのがそこだったのですが。薄くて読みやすい一冊です。

着流し探偵事件帖 青空の下の密室
着流し探偵事件帖 白いブランコの鎮魂曲
村瀬 継弥 作 小手川ゆあ イラスト 富士見ミステリー文庫 (文庫)ミステリ

着流しです。誰が着流しかというと、探偵役の高校生の普段着が着流しなのです。そして、夏休み中に「探偵、皆を集めてさてと言い」をやったためなのか、着流し姿で事件を解決へと導きます。これは本格ミステリです。十代向けに書かれてはいますが。
タイトルどおり問題となる密室は青空の下、学校の屋上でした。逃げ場のない屋上で犯人はどうやって脱出したのか?凶器はどこへ消えたのか?四人の高校生が事件を追及します。意表をつく解答をお楽しみあれ。

クロへの長い道 
二階堂黎人 双葉社(単行本) 幼稚園児ハードボイルドミステリ

語り口調はハードボイルド。しかし実体は六歳の幼稚園児が探偵の連作短編集。そのギャップも楽しめる本格ミステリ。なにしろ、幼稚園児ということで、気付け薬は濃いコーヒーでもブランデーでもなく、シゲキックス梅味だったりするのです(激烈酸っぱい駄菓子です)。このシリーズでは二作目。一作目は「私が捜した少年」というタイトルです。

怪盗ニック登場
怪盗ニックの事件簿
怪盗ニックを盗め
怪盗ニック対女怪盗サンドラ
エドワード・D・ホック 早川書房 (単行本) 短編ミステリ 

怪盗ニック・ベルベットもの。高額な料金でどうでもよいものばかりを盗む怪盗の本格ミステリ。短編ミステリの王者ホックならではの意表をつく作品群です。
未読ながら(「怪盗ニックを盗め」に収録のはず)「プールの水」は気になる作品。
ある女性がニックに「プールの水を盗んでほしい」と依頼します。水道水の筈のプールの水を。女性の意図は何なのか、ニックはプールの水を盗むことが出来るのか。
ホックの作品はあまり邦訳がなく(キャラクターと作品が多すぎるのもある)、この2冊も殆ど書店には出ていません。図書館を利用するか、注文するのがベストです・・・が現在絶版かと思われます。
が、続報!「怪盗ニック」シリーズがクラシック・セレクションとしてハヤカワ・ミステリ文庫で復刊!待ち望んでいたんだこの時を〜。垂涎モノのミステリをどうぞ。

双頭の悪魔
有栖川有栖 創元推理文庫 (文庫) 本格フェアミステリ

「月光ゲーム」「孤島パズル」に続く、江神&学生アリスもの。恐らくこの作者の堂々たる代表作でしょう。本格ミステリ。素晴らしいのは「読者への挑戦」が3回も挿入されていること。3回ですよ!!私などはそれだけで倒れ込みそうに嬉しいのですが、それはさておき。
「孤島パズル」事件でショックを受け、大学を休んだままの友人マリアを迎えに出かけた推理小説研究会の面々は、関係者の誤解と偶然から川を挟んだ2つの土地に分断されてしまう。隔てられた2つの土地で起こる殺人事件。双方の事件に接点はあるのか。マリアは立ち直ることが出来るのか。ささいなことがキーポイントになるので毎行見逃せません。
このシリーズは作品数がまだ少なく(アンソロジーに短編が数本あるくらい)、「やけた線路の上の死体」がのった雑誌を図書館で見つけたときは喜んでしまいました・・・。
2007年現在「やけた線路の上の死体」は『動物園の暗号』(岩崎書店)に収録されています。
そして江神&学生アリスシリーズ最新刊「女王国の城」登場。相変わらずのフェアミステリです。

ブラウン神父の童心 
G・K・チェスタトン 中村保男 訳 創元推理文庫(文庫) 短編ミステリ

チェスタトンを知るにはこの本をまず読めといわれます。なかでも「見えない男」は有名。
見えない犯人。さあ、一体誰なのでしょうか。

魔神
和田はつ子 角川春樹事務所(単行本) ホラーミステリ

論文に追われる日下部は、ある日自分の住むマンションのゴミ捨て場でゴミ袋に入れられた人間の死体を発見する。そしてそれを期に事件に巻き込まれていくのだが・・・。
日下部助教授シリーズ。アイヌ民族の血を引く日下部助教授と水野刑事が協力して事件を解決します。ところでラスト近くで日下部が「(前略)小学校の頃遠足で江別を通った時、洪水を起こした石狩川を見たんだ(後略)」という台詞があります。・・・どこの橋?内陸部に住んでいたという日下部、遠足でそんなところまで歩いてこられるものなんでしょうか。きっとバス遠足でしょう・・・。しかし、同級生がその時橋から落ちて死んだと言っています。やはり歩き・・・?私のちょっとした謎なのです。

黒いトランク 鬼貫警部事件簿
鮎川哲也 光文社文庫・創元推理文庫(文庫)本格ミステリ

暫くの間品薄が続いていて再販待ち焦がれていた「黒いトランク」。ミステリ界では有名ですね。
光文社からは「ペトロフ事件」「人それを情死と呼ぶ」「準急ながら」「戌神はなにを見たか」に続いて登場。全て鬼貫警部シリーズです。
死体入りの黒いトランクが発見される事から話は進んでいきますが、出てくる容疑者は鬼貫の学生時代の関係者ばかり。彼らのアリバイを確認していくうち、鬼貫は黒いトランクは複数あったのではないかと思い至るのですが・・・・・・。
読者が読みながら解決するのはとても難しいような・・・・・・。トランクが複数あるだけならまだいいんですけどね。とても複雑なので、光文社文庫では巻末に図解が載っています(ネタバレなので読了後にどうぞ)。脱帽ものです。
現在「死びとの座」「鍵孔のない扉」「王を探せ」「偽りの墳墓」「沈黙の函」(光文社)
「黒い白鳥」「憎悪の化石」「死のある風景」(創元推理文庫)も登場。
惜しくも亡くなられた鮎川氏。リアルタイムでこの人が作品を発表していた時代に生まれたかったなあと今思ったりするのです。
46番目の密室
有栖川有栖 講談社(文庫)本格ミステリ

こちらは火村助教授&小説家アリスもののシリーズ第1作目。
クリスマスイブに北軽井沢にある先輩同業者・真壁聖一の家に招待されたアリスと火村。彼ら以外にも複数の推理小説家と担当者が招待されていたその場所で、真壁は46番目の作品を書き上げたら密室物を打ち止めにすると公表する。そしてクリスマスパーティーを終えた真夜中、アリスは真壁の書斎で暖炉に上半身を突っ込まれ焼かれている人間を発見するのだが・・・・・・。
このなかで「天上の推理小説」という言葉が出てきます。どんなだ(笑)。そんな話を読みたいし書いてみたいものです。悟りの境地ですな・・・・・・。
「人間、生きてる限り『お疲れ』で『ご苦労』なんだよ」という火村助教授の台詞が妙に印象的です。こちらのシリーズは数多く出ていますが、複数の出版社から出ているので、探しましょう(笑)。
大体は講談社・東京創元社・角川書店・新潮社・祥伝社等など。アンソロジーもあり。
それこそリアルタイムでこの人が作品を発表している時代に生まれてきて良かった・・・と思える作家。

狩野俊介シリーズ 
<月光亭事件><幻竜苑事件><夜叉沼事件><狩野俊介の冒険><玄武塔事件><狩野俊介の事件簿>天霧家事件><降魔弓事件><狩野俊介の肖像><白亜館事件><銀扇座事件(上・下)><久遠堂事件><狩野俊介の記念日><百舌姫事件><翔騎号事件>
太田忠司 徳間書店 (新書) 本格推理小説

探偵事務所を開いている野上さんと、その里子の狩野俊介少年、俊介少年の愛猫ジャンヌが事件を解決するシリーズ。懐かしさを感じるのはこの作品の世界観かも。この世界にはCDだとか最近の機械・機器が出でこないから。昭和の中頃の雰囲気があるというのか。だから、安心して読んでいけるミステリ。最近は出版ペースがゆっくりになったけれど、そんなこと気にしないから続刊して欲しいシリーズ。

名探偵夢水清志郎事件ノートシリーズ 
<そして五人がいなくなる><亡霊は夜歩く><消える総生島><魔女の隠れ里><踊る夜光怪人>機巧館のかぞえ唄><ギヤマン壺の謎><徳利長屋の怪><人形は笑わない><いつも心に好奇心!(怪盗クイーンからの予告状)><『ミステリーの館』へ、ようこそ><あやかし修学旅行 鵺のなく夜><笛吹き男とサクセス塾の秘密><ハワイ幽霊城の謎><卒業〜あかずの教室を開けるとき〜>
はやみね かおる 講談社青い鳥文庫 (文庫)本格推理小説

三つ子姉妹の家の隣に引っ越してきた、長身で黒いスーツにサングラスの「教授」という愛称をもつ「名探偵」のミステリシリーズ。NHKでドラマ化もしました(三つ子が双子になっていたけれど)。
初めてこのシリーズを見たときびっくりした。「機巧館のかぞえ唄」で辻 真先氏が解説を書いていたからなのだけれど、青い鳥文庫にミステリ作家が解説を書くなんて一体どうしたことなんだと思ったので(失礼)。もうその時点でお買いあげ決定。ハズレじゃないって直感した作品のひとつ。あくまでも児童向けに書かれているのに、本格推理なのだから素晴らしい。おまけにそれ以外にも楽しめる部分がちらほらと点在している。
「踊る夜光怪人」で「(前略)わたしの読んでるまんがで、長髪の主人公が、「謎はすべて解けた!」といい、真衣の読んでるまんがで、眼鏡をかけた小学生が、「犯人はおまえだ!」といい、美衣の読んでるまんがで医学生が、「すこしは学習したまえよ、山田くん。」といったとき、(後略)」とあるけれど、このシ−ンだけで作者が「金田一少年の事件簿(天樹 征丸・さとう ふみや・講談社)」「名探偵コナン(青山剛昌・小学館)」「迷宮シリーズ(神谷 悠・白泉社)」を読んでいるらしいのが解る。全部ミステリだけど。
広くチェックしてるなあと思いつつ、全て解った私も一体(笑)。
児童向けミステリだってあなどれない昨今なのです。
<『ミステリーの館』へ、ようこそ>は密室本(解決篇が袋とじになっているものを指す)。青い鳥文庫で密室本・・・・・・。しかも二重密室本なんて初めて見た。
甘んじることなく子供に向けて本格を書く。はやみねかおる氏、素敵過ぎ。

漫画でも発売中(えぬえけい画・講談社)。ほぼ忠実に漫画化されていて、文章で読むのとは又違った感動が味わえます。お勧め。

少年名探偵 虹北恭助の冒険
少年名探偵 虹北恭助の新冒険
少年名探偵 虹北恭助の新・新冒険
少年名探偵 虹北恭助のハイスクール☆アドベンチャー
少年名探偵 虹北恭助の冒険 高校生編
少年名探偵 虹北恭助の冒険 フランス陽炎村事件
はやみね かおる 講談社 (新書) 本格推理小説

小学五年生の響子ちゃん(わたし)と同級生だけれども学校に行かず、家の古本屋の店番をしている恭助くんのお話。この作者の登場人物達は自然体なところがいい。優しいミステリなのです(トリックが優しいわけではない)。

ミステリでの短編集には「〜の冒険」とつけるのが決まりなんだろうか・・・。エラリー・クイーンからの伝統ですか?それはさておき、これは「小説現代増刊メフィスト」に連載された短編集。メフィストに児童推理小説が掲載されるってなんか凄い。表紙に名前を発見したとき驚いた。
そうそう、夢水清志郎シリーズもそうですが、現在進行形で人死にのでないミステリです。殺人物ではない謎をこの作者のキャラクターは解いていく。そして、ハッピーエンドで終わる。穏やかで優しいミステリを読みたかったらこの作者かも。
「虹北恭助のハイスクール☆アドベンチャー」は漫画の原作用に書かれたお話です。なのでほぼ同じ内容の漫画も出版されています(「少年名探偵虹北恭助の冒険 高校編」やまさき もへじ画 講談社)。

サム・ホーソ−ンの事件簿1〜6
エドワード・D・ホック 木村 二郎 訳 創元推理文庫 (文庫)短編ミステリ

サム・ホーソーン物を年代順に収めた一冊目。老年のサム医師の回想録的書き方をしたミステリシリーズ。有名なのは「有蓋橋の謎」かな。アンソロジー収録回数も多い。
とにかく感じるのは、作者の巧さです・・・。全6巻。

これが密室だ! 
ロバート・エイディー 森 英俊 編訳 新樹社 (単行本) 密室ミステリオンリー

一言で言えば密室莫迦(失礼。でも誉め言葉です)。ロバート・エイディーは密室物の収集で有名。この本は密室物のミステリしか載っていない!分厚い本です。ここまで極めるかなあと思っちゃうのだけれど、好きなんですね。需要があるから供給もあるというのか。ミステリ好きなら一回は読んでも良いかもしれません。(そんなのありか!?という密室も含まれていて面白いです)

真っ暗な夜明け
氷川 透 講談社 (新書) フェアミステリ

「読者への挑戦」が挿入されているミステリ。つまりはフェアミステリな訳で、つまりはメモしまくって個人個人の時間の動きを調べていって推理すれば解けるのかな、というミステリ。なのだけれども、巧妙なのがこの作者。なんでもない場所なのに密室物のような状況を描き出す。特にこの話などは、地下鉄の改札口とトイレなんだから!倫理で解決を叩き出す作者です。これがシリーズ一作目。他に「密室は眠れないパズル」(原書房・単行本)「最後から二番目の真実」「人魚とミノタウロス」(講談社)。
別シリーズで「追いし者 追われし者」(原書房)「密室ロジック」(講談社)がある。

ドッペルゲンガー宮<あかずの扉>研究会流氷館へ
カレイドスコープ島
<あかずの扉>研究会竹取島へ
ラグナロク洞
<あかずの扉>研究会影郎沼へ
マリオネット園
<あかずの扉>研究会首吊塔へ
霧舎 巧 講談社 (新書)新本格ミステリ

なんだかちょっと横溝正史を彷彿としてしまいます。館物で孤島物とくるとね。しかも本格推理小説のルールを守ったトリックをやられちゃうと(登場人物自体がそれに固執する場合もある。講義すらする)、それこそやられた〜と思うのです。読了後改めてタイトルの意味が解る作品です。
しかし、「後動悟」ってまるで「金田一耕助」のような名前じゃないですか(金田一って殺人起こりきってから推理するでしょう)。そう思うのは私だけなんだろうか。「マリオネット園」の中表紙ではご丁寧に誤植になっていて芸が細かいし(笑)。
ちなみに原書房から出ている「名探偵はもういない」(単行本)は後動悟の親父さんの話。「カレイドスコープ島」とちょっぴりリンクしています。
「名探偵はもういない」の関連本「名探偵はどこにいる」(原書房・単行本)も発売中。

京極堂シリーズ
<姑獲鳥(うぶめ)の夏><魍魎(もうりょう)の匣(はこ)><狂骨(きょうこつ)の夢><鉄鼠(てっそ)の檻><絡新婦(じょろうぐも)の理(ことわり)><塗仏(ぬりぼとけ)の宴 宴の支度><塗仏(ぬりぼとけ)の宴 宴の始末><陰摩羅鬼の瑕><邪魅の雫>
京極 夏彦 講談社 (新書・文庫) 妖怪ミステリ

箱本、枕本と称されるシリーズ。分厚い。どれだけ厚く製本出来るのか挑戦しているのじゃないかと思う程分厚い(某中学校で「持出禁」シール付いていた「千夜一夜物語」位厚い。←勿論「完訳版」だったから持出禁だったと思われます(笑))。
家業が神主、本業が古本屋、副業が拝み屋、の京極堂こと中禅寺秋彦が登場する話。
大抵は「私」の関口巽が話を進行させる。ちなみに「探偵」は別に存在する。強烈な「探偵」が。
京極堂は「憑き物」を落とす人。長々とした台詞は小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」を読んでいる気分になるけれど、それが後々意味を持ってくるとなると、飛ばすわけにも行かず、黙々と読む羽目になる。
速読以外で一日で読了するのは難しい本。
内容以外でも面白いのは、見開きの最後の行が必ず「。」で終わっていること。文庫化にあたっても修正されているところが凄い。
本の厚さに恐れず、挑戦をお勧めする。図書館で借りる場合には、貸し出し期間に余裕を持って読み始めるのが宜しいかと思われます。
「百鬼夜行-陰」「百器徒然袋-雨」「百器徒然袋-風」「今昔続百鬼-雲」とリンクしています。
霧舎学園ミステリ白書シリーズ
<四月は霧の00密室><五月はピンクと水色の恋のアリバイ崩し><六月はイニシャルトークDE連続誘拐><七月は織姫と彦星の交換殺人><八月は一夜限りの心霊探偵><九月は謎×謎修学旅行で暗号解読><十月は二人三脚の消去法推理><十一月は天使が舞い降りた見立て殺人><十二月は聖なる夜の予告殺人>
霧舎 巧 講談社(新書) ミステリー

タイトル見たとき、一瞬どうしてくれようと思ったのは私だけなのだろうか(笑)。本格ミステリ。
<あかずの扉>シリーズより、軽い雰囲気です。霧舎学園にまつわる恋愛伝説を主題に絡め、月に一回事件がおきるという!(凄い学生生活だ!)ミステリシリーズ。
つまり12冊は出る予定で、1冊1冊謎が違うわけです!1冊目は密室、2冊目はアリバイ崩しというように。
しかしながら、この作者・・・・・・もお、どうしてくれよう・・・・・・。ここまで「本」を使いまくるトリックというかヒントというかサプライズ仕掛ける人いません。何がどうサプライズなのか知りたい人は読もう!。
絶対やられた!と思うから。次の仕掛けが楽しみです。「本」好きにはたまらない仕掛けです。
時たまに<あかずの扉>とリンクしていたり・・・・・・。
七月・八月は並べながら読むのがお勧め。2冊同時発売には意味がある!
建築探偵桜井京介の事件簿シリーズ
<未明の家><玄い女神><翡翠の城><灰色の砦><原罪の庭><美貌の帳><桜闇>
<仮面の島><センティメンタル・ブルー><月蝕の窓><綺羅の柩><Ave Maria>
<失楽の街><胡蝶の鏡><聖女の塔><一角獣の繭><黒影の館><燔祭の丘>
篠田 真由美 講談社(新書) ミステリー

建築探偵というからには(桜井京介自身が言っているわけではない)、色々と建物が出てきます。
だからといって「館モノミステリ」ではない、と思う(定義は人それぞれですが)。
桜井京介は建築史研究者。そして本人かなり不本意ながら探偵役をやる。
この冊数かけて、少しずつ主要人物たち(京介・深春・蒼・神代教授)の過去があらわになってきていますが、それでも未だ謎多き男・桜井京介(謎多きも何も謎だらけだ)。
<燔祭の丘>にてようやく完結。
虹果て村の秘密(Mystery land)
有栖川有栖 講談社 (単行本)ミステリー

Mystery land第二回配本。
12歳の秀介は、近所に住む推理作家に招かれて、彼女の娘ミサトと共に、虹果て村で夏休みを過ごすことになった。
しかし、憧れの推理作家の家で、楽しく過ごすはずが、村では次々と殺人事件が起こり始める。
推理作家志望の秀介は、友人で警察官志望のミサトと共に事件を調べ始めるのだが・・・。
虹にまつわる七つの伝説。高速道路建設をめぐって賛成派と反対派の対立。そして密室殺人。
二人が明らかにする真相とは・・・。
ぼくと未来屋の夏(Mystery land)
はやみねかおる 講談社 (単行本)ミステリー

Mystery land第二回配本。
「未来を知りたくないかい?」六年生の風太は夏休みの前日、未来を100円で売る未来屋猫柳さんに呼び止められた。かなり個性的な猫柳さんは、風太の家で(半ば強引に)居候することに。
風太の住む髪櫛町では、昔からかくれんぼをすると最後まで見つからない子がいるといわれる神隠しの森や首なし幽霊の話、人喰い小学校の噂、人魚の宝の謎が言い伝えられていた。
猫柳さんにはかなり不快な思いをさせられる風太だが、夏休みの間、二人は町の謎を一つずつ解いていく。
誰も死なないミステリ健在。
猫柳さん、風太にだけ扱いが酷い。というか、皆風太に酷い扱いしてる・・・気がする。無意識に。大人って残酷・・・。頑張れ少年。人生、理不尽な事もあるもんさ。
月刊シリウスで漫画連載中。平成18年1月と7月に単行本発売。
卵のふわふわ 八丁堀食い物草子・江戸までもなし
宇江佐 真理 講談社文庫

食べ物が良く出てくる話です。章タイトルが食べ物。
話しの中心にいる、のぶの舅・椙田忠右衛門が食道楽なのです。ごちそうにあたる卵や、なんでもない水雑炊や心太など。
舅や姑、夫とのかかわりによる、のぶの心中が丁寧に描かれています。
誘拐事件などが含まれているので、ミステリに分類しています。
お茶と探偵シリーズ
<ダージリンは死を招く><グリーンティーは裏切らない><アールグレイと消えた首飾り><イングリシュ・ブレックファースト倶楽部><ジャスミン・ティーは幽霊と><カモミール・ティーは雨の日に><ブラッドオレンジ・ティーと秘密の小部屋><ロイジン・ティーと天使のいる庭><ホワイト・ティーは映画のあとで>
ローラ・チャイルズ 東野さやか訳 ランダムハウス講談社 (文庫)

インディゴ・ティーショップのオーナーのセオドシアが主人公のミステリー。
紅茶や日本茶、中国茶など、色々なお茶やお菓子、茶器が登場するので、その点も注目のシリーズ。
実際にあったら、かなり魅力的なティーショップです。
しかし、文中のブレンドティーは嗅覚の良い日本人と日本の軟水では、キツイ風味かもしれません。
レモングラスを使った夏のお茶は、ルピシアの「ハツコイ」が実在します。グリーンティー系でレモン風味。ホットでもアイスでも飲めます。ハツコイはレモン味……ナイスネーミング!
ラプサンスーチョンは日本の軟水でいれると「ザ・正露丸」の風味だそうですが、アガサ・クリスティーの小説内でも飲めない人が書かれているので、イギリスでも飲めない人は飲めないようです。
口中医桂助事件帖シリーズ
<南天うさぎ><手鞠花おゆう><花びら葵><葉桜慕情><すみれ便り><想いやなぎ>
<菜の花しぐれ><末期葵><幽霊蕨><淀君の黒ゆり><かたみ薔薇><江戸菊美人>
和田 はつ子 小学館文庫

江戸の歯医者さんの事件帖。
温厚な桂助と、短気だけど気のいい友人で房楊枝(歯ブラシ)職人の鋼次が、一緒に動いている事が多いです。幼馴染で<いしゃ・は・くち>(桂助の診療所)を手伝ってくれている志保の存在も気になるところ。
江戸の歯科医のことや、食べ物、大奥についてなど、巻によっては詳しく描かれています。
甘栗と金貨とエルム
甘栗と戦車とシロノワール

太田忠司 角川書店 (単行本)

父親が事故死し、甘栗晃に残されたのは、父親が個人経営していた甘栗探偵事務所。
後片付けをするために、探偵社にいた晃の前に、小さな依頼人が現れる。
先払いで父が受け取ったとされる金貨は見つからず、少女エルムは晃に仕事を継続するように強要する。
エルムの依頼は『ママを捜してもらう事』。晃は父の遺品の手帳を元に、捜査を開始する。

17歳の甘栗晃の一人称「私」でストーリーは進んでいくので、ハードボイルド調なのだけれども、会話では「俺」なので、ライトノベルズのような感覚に。
父が亡くなったことで、高校を中退(友人の画策により、退学届けは保留にされている)しているため、晃は日中でも自由に行動しています。愛車のジャイアント(フラットロード・タイプの自転車)で。
終盤で、エルムの依頼解決の影にあるもう一つの「秘密」も明らかになる、読み応えのある一冊です。
すきま
ぼくらの先生!
はやみねかおる 講談社 (単行本)

定年退職したもと小学校教師が奥さんにする昔話ミステリ。
結婚前や結婚後、学校や赴任先であった不思議な話を奥さんに話して聞かせます。そして、奥さんがスバリと謎の真相を鮮やかに推理してみせる……。
四季折々の連作短編集。
すきま
空を見上げる古い歌を口ずさむ
高く遠く空へ歌ううた

小路幸也 講談社(文庫もあり)

江別在住のミステリ作家。メフィスト賞を受賞して作家になられた訳ですが、余りメフィストを売ってなさげなこの市で……凄いな、と言うのが第一印象でした。いや絶対、メフィストとジャーロは1書店に1冊位しか配本ないって(両方ミステリ系の雑誌です)。
ノスタルジーを感じさせる作風、と言われる方です。この2冊は姉妹編といっていいのかな。

「空を見上げる古い歌を口ずさむ」
息子の彰が、人の顔が皆「のっぺらぼう」に見えると言い出した。その時、凌一は兄がいなくなる前に、残していった言葉を思い出す。
「いつか、お前の周りで、誰かが<のっぺらぼう>を見るようになったら呼んでほしい」
凌一は20年ぶりに、兄に連絡する決心をする。

「高く遠く空へ歌ううた」
ついに十人目の死体を見つけてしまった、小学六年生の「ぼく」。皆はぼくのことを「ギーガン」と呼ぶ。左目が義眼だから。
死体を見つけた場所で、何度か革ジャンの男を見ていたギーガン。そしてルーピーに聞こえる犬笛の歌。
ギーガンが九番目に見つけた父の死の謎が解けていく時、カタカナの町の名前が再び現れる。
すきま
死神の精度
伊坂 幸太郎 文藝春秋(文庫もあり)

人間には興味が無いが、ミュージックが好きで、雨男で、どこか空気が読めなくてトンチンカンな受け答えをする死神・千葉と、彼が担当する人間との連作短編集。
どの話からも読めるけれど、頭からきちんと読んでいくと、最終話で収束感が味わえる。
実はとても長い年月の話。
すきま
銃とチョコレート
乙一  講談社ミステリーランド(箱入り単行本)

父親が死ぬ前に買ってくれた聖書から、怪盗ゴディバの物らしい、手書きの宝の地図を見つけた、少年リンツ。リンツは憧れの名探偵ロイズに、その宝の地図を送るのだが……。

いろんな意味で衝撃を受ける本。まずはイラストが何ともいえない画風。少々不気味。
しかし、内容だってイラストに負けない。何てったって、大人が酷い。「大人って汚えよう!」と子供が最初に学ぶ本になりえるんじゃないだろうか。というか、なって欲しいかも。
人には色んな面があるんだよ、というかね。毅然として変わらない人もいるとか、学んで欲しいな。
ビンタされて鼻血出してる名探偵なんて、そういない……。
途中で投げ出さずに、最後まで読んで欲しい本です。
ゴディバ・リンツ・ロイズ、でお解かりのように、登場人物はチョコレート関係の名前です。
すきま
魔女の死んだ家
篠田 真由美 講談社ミステリーランド(箱入り単行本)

女王や魔女と呼ばれた女主人が死んだ事件に関する、インタビューを繋ぎ合わせて、ラストに解決される構成。事件から数年を経て、桜井京介らしき人物が謎を解いています。
読んでいる途中で、ある程度感づいちゃう部分はありますが、この作者特有の物語の中に閉じ込められるような感覚は顕在。鬱蒼と木々が茂る庭が浮かび上がります。
すきま
お料理名人の事件簿
<1桃のデザートには隠し味><2かぼちゃケーキを切る前に><3クッキー交換会の隣人たち><4休日には向かないクラブケーキ>
リヴィア・J・ウォッシュバーン 赤尾 秀子(訳) ランダムハウス講談社文庫

ピーチフェスティバルの料理コンテストで優勝を狙うフェイス。
女性ばかりだった下宿人に、男性のサムが来たり、桃農園主の殺人事件に出くわしたり、フェスティバルではフェイスのコブラーを食べた直後に審査員が死んだり!トラブル続き。
犯人に疑われた友人を救うため、フェイスは怪しい人たちを調べていく事に……。
 すきま
 ディーン牧師の事件簿
ハル・ホワイト 高橋まり子 創元推理文庫

齢80歳になり、牧師を引退したディーン。愛犬の老セントバーナードと共に慎ましく暮らしている。朝寝坊とコーヒーとバナナプディングとミストサウナと雨が好きなディーンは、親友の若き刑事マークが担当する事件の相談にのる。
足跡のない殺人事件、消えた狙撃手、船上での殺人事件など6編。
現代もののミステリなんだけれど、どこかクラシカル。エドワード・D・ホックが好きな人は、お気に召すであろう一冊。
 すきま
死亡フラグが立ちました! 
七尾 与史 宝島社

フリーライター陣内はクビを回避するため、「死神」と呼ばれる殺し屋を見付け、、スクープ記事を狙うことになった。「死神」とは24時間以内に偶然の事故によってターゲットを殺す殺し屋。
陣内は学生時代の先輩・本宮や組長を「死神」に殺されたヤクザ・松重らと共に「死神」の正体に迫っていく。一方で、退官間際の警部・板橋と新人刑事・御室も「死神」を追っていて……。
すきま
 くらのかみ
小野 不由美 講談社ミステリーランド

大叔父に会いに疎遠になっていた、今は亡き母方の本家に父親とやって来た耕介。
大人達が話し合いをしている間、5人の子供と大学生の三郎兄さんは暇を持て余す事に。
三郎から「四人ゲーム」の話を聞いた耕介達は、泣き出した光太を三郎が母屋に連れて行っている間に、蔵座敷に入り込んだ。本家の神様の厨子がある蔵座敷は「四人ゲーム」をやるにはぴったりの場所だったのだ。灯りを消して「四人ゲーム」を始めた耕介達。ゲームが終わった時、四人だった子供が五人に増えていた。
そして母屋ではお膳の中に毒草が混ぜられ、大人たちが倒れる騒ぎになっていた。
お膳に入っていた毒草は祟りなのか、人為的なものなのか……。
すきま 
 オレンジの陽の向こうに
ほしおさなえ 東京創元社

鳥沢真は高校時代の友人の結婚式で、翌日行われる結婚式と勘違いして来た森泉棗と偶然出会う。
同居していた親友が死に、居候していた部屋を追い出されたという棗に、空き部屋を提供することに。
仲良く同居していた真と棗だが、ある日を境に何故かお互いに会えなくなってしまう。
連絡も取れなくなった棗の部屋に入ってみた真は、そこに職場に置いていた筈の「イワフネ」を見付ける。それは結婚式場で久しぶりに再会した友人・氏原に貰った白い地衣類だった。
棗は真を探して真の職場を訪ねるが、そこで真のデスクの上の「イワフネ」を部屋に持って帰る事にする。家に帰りついた直後、真が爆発事故に巻き込まれた可能性を知らされる棗。
その夜、真と棗は漸く部屋で顔を合わせる事が出来たのだが……。
 すきま
 背の目
道尾 秀介 幻冬舎

ホラー作家の道尾は旅先の白峠村で、風の中に不気味な声を聞く。
河原で聞こえた声の意味に気づいた道尾は、驚き東京に戻ると、「霊現象探究所」を構える旧友・真備庄介に10年ぶりに会いに行くことに。
道尾の話を聞いた真備は、道尾と事務員・北見凜と共に、白峠村に向かう。
白峠村では背中に二つの目が写る写真を撮られた人間が自殺するという相談が、真備の処に来ていたのだ。「天狗伝説」「神隠し」も絡んできて、道尾たちは白峠村周辺に過去に起きた事件を調べていくのだが……。
 すきま
 骸の爪
道尾 秀介 幻冬舎

ホラー作家の道尾は従兄弟の結婚式に参列した後、取材のために仏所・瑞祥房を訪れる。
ホテルを予約しそこなっていた道尾は、瑞祥房に泊めてもらうことに。
その夜、カメラを忘れたことに気が付いた道尾が、仏像安置所で見たのは、大笑いしている千手観音と。暗闇の中で額から血を流す鴉枢沙摩明王だった。
そして仏師が一人姿を消すが、瑞祥房で仏師が姿を消すのは、これが初めてではないという。
東京に戻った道尾から話を聞いた真備は、道尾と凜と共に瑞祥房に向かうのだが……。
 すきま
儚い羊たちの祝宴
米澤 穂信 新潮社 

大学の読書会「バネルの会」に関わる学生たちに関わる話。
話の最後の1行で落とす!という縛りで書かれているブラックなミステリ短編集。
「身内に不幸がありまして」「北の館の罪人」「山荘秘聞」「玉野五十鈴の誉れ」「儚い羊たちの晩餐」の5編。
 すきま
プラ・バロック
エコイック・メモリ
衛星を使い、私に 

結城 充考 講談社

(プラ・バロック)
賃貸料金滞納の冷凍コンテナの確認に立ち会ったクロハは、中から整然と棚に並ぶ死体を発見する。状況から集団自殺と思われたが、他にも類似した事件が頻発しているのが発覚する。
(エコイック・メモリ)
ネット上にアップされた4つの動画。それは「回線上の死」というタイトルの人が殺されるまでの映像だった。管理官から3日間の操作を命じられたクロハ。クロハ自体にも危険が及ぶ中、映像と音のズレに気づくのだが。
(衛星を使い、私に)
「プラ・バロック」以前のクロハを描いた連作短編集。「唯一のエス」「二つからなる銃弾」「雨が降る頃」「衛星を使い、私に」「Sは瞼をとじた」「計算による報酬」を収録。
 すきま
七つの海を照らす星
アルバトロスは羽ばたかない

七河 迦南 東京創元社

(七つの海を照らす星)
児童養護施設「七海学園」つばめ寮に努める保育士の北沢春菜。
学園で起きる事件と同じくして「学園七不思議」が子供達の間で噂される。春菜は受け持ちの葉子の相談のため、児童相談所の担当・海王に会うのだが……。
第18回鮎川哲也賞受賞作。
(アルバトロスは羽ばたかない)
「七つの海を照らす星」続編。
金属3年目になった春菜。相変わらず学園の子供たちにまつわる日常の事件は起きていて、てんてこ舞い。
そんな中、学園の子供たちも通う高校の文化祭の最中に、屋上からの転落事故が起きる。 これはただの事故なのか?転落事故以前の春から晩秋にかけて起こった4つの事件に手掛かりが……。

連作ミステリ。最終話で物語がひっくり返される驚きが。
 すきま
家元探偵マスノくん−県立桜花高校★ぼっち部
笹生 陽子 ポプラ社

入学早々食中毒で学校を休み、友人を作り損ねたチナツ。
一人で昼食を食べている所を、次期華道家元マスノくんに見つかり、部活へ誘われる。そこは個性的な一人部長ばかりが集まる部活だった。
第二演劇部の部長ユリヤ、戦士部のサトシ、ネットで参加しているスカイプ、そして探偵部のマスノくん。チナツは半ばオヤツ部員として部室に通いだすが、そのうち依頼されたり探し出した謎を、マスノくんや、部室の皆と追いかける事に。
 すきま
死の相続
セオドア・ロスコー 横山啓明(訳) 森英俊(解説) 原書房 

肖像画家のカートと恋人のピートの元へ、雨の晩に来客が訪れる。弁護士ピエール・ヴァラーンタン・ポンァン・トゥーセリーネは、現れるなりピートに叔父のイーライが亡くなったと告げる。しかも、殺されたらしい。
そして相続の権利があるピートに、遺言状公開の場にいなければ相続を放棄することになるので、ハイチに来るようにと旅費を置いていく。
カートとピートはハイチに赴き、陰鬱なモルン・ノワール屋敷に着くが、そこに待ち受けていたのはピート以外の7人の相続人たちだった。
イーライの遺言状は「第1相続人が24時間以内に死んだ場合、第2相続人が権利を得る。第2相続人が24時間以内に死んだ場合、第3相続人が……」という奇妙なものだった。
そして遺言状公開から程なく、相続人が次々と殺されていく。一体犯人はどこから現れるのか?

舞台がハイチなので、アレが出てきます。
 すきま
犯罪
フェルディナント・フォン・シーラッハ
酒寄 進一(訳) 東京創元社
 
現役刑事事件弁護士が、現実の事件を材に』書いた短編集。
長年連れ添った妻を殺した男、彫像の足にあるはずの棘が気になる男、盗んだ金でエチオピアの寂れた村を豊かにした男の話など。事件のあらましと、裁判について簡潔な文章で書いた1冊。
「フェーナー氏」「タナタ氏の茶椀」「チェロ」「ハリネズミ」「幸運」「サマータイム」「正当防衛」「緑」「棘」「愛情」「エチオピアの男」の11編。
 すきま
ブロードアレイ・ミュージアム
小路 幸也 文芸春秋

ブロードウェイの小路の奥にある「ブロードアレイ・ミュージアム」のキュレーターになったエディ。
着任早々、エレベーターガールのフェイがエディが預かったばかりのトランペットに触り、固まったように動かなくなってしまった。フェイには<触りたい病>があり、気になるものに触ると、その物にまつわる悲劇が見えるという。
「ブロードアレイ・ミュージアム」の住人は、未来に起こる筈の事件を回避するために奔走するのだが……。 
 すきま
嘆きのテディベア事件
天使のテティベア事件

ジョン・J・ラム 阿尾 正子(訳) 東京創元社

(嘆きのテディベア事件)
ブラッドリー・ライオンはサンフランシスコ市警強行殺人課の刑事だったが、勤務中の怪我で脚を傷め、、刑事を辞職した。その後テディベア作家の妻・アシュリーの実家があるレメルケンプ・ヒルで田舎暮らしを満喫している。
アシュリーがシェナンドー渓谷テディベア・フェスティバルに出掛ける当日の朝、ブラッドリーは自宅前の川で男の死体を発見する。ブラッドリーは男が殺されたと判断するが、やって来た保安官は事故死だと決めつける。
(天使のテディベア事件)
春の日、ブラッドリーとアシュリーはテディベア。ショーに参加することに。会場のホテルについて早々、ブラッドリーはテディベア作家の夫婦げんかが暴力に発展する前に止める羽目になる。
その夫妻は有名な天使のテディベア作家だったが、夫婦関係も周りの人も険悪な雰囲気を漂わせていた。
そして、レセプション翌日の朝食で、事件が起きてしまうのだが……。 
 すきま
 さくらの丘で
小路 幸也 祥伝社

母方の祖母が亡くなり、孫の満ちるに遺言と鍵が遺された。
子供の頃から祖母が満ちるに話していた、桜の樹がある丘と<私たちの学校>と呼んでいた西洋館を遺すと。正確には、祖母と祖母の友人との3人が、それぞれの孫娘宛に、遺していたのだ。
満ちるは父方の叔父・楓に相談し、満ちる以外の2人の相続人・香織と紗代と会う。
会うなり意気投合した満ちるたちは、彼女たちの祖母の故郷である村へ、<さくらの丘>へ向かう。
丘の上の西洋館は健在し、誰かが管理しているようだった。
満ちるたちはそれぞれが持つ鍵に合う扉を探していくが、1つだけ鍵が見つからない。彼女たちは<さくらの丘>と西洋館について調べていく。

終戦直後の田舎での出来事。祖母・ミツの時代と、孫・満ちるの時代とが交互に描かれる。
 すきま
折れた竜骨
米澤 穂信 東京創元社

ブリテン島の東、ロンドンから北海を船で3日進んだ先に浮かぶソロン諸島。
領主ローレント・エイルウィンは、旅の騎士ファルク・フィッツジョンとその従士ニコラ・バゴに、魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われていると忠告を受けるも、その夜命を落とす。
それはファルクが追う暗殺騎士エドリックの魔術に操られた≪走狗≫の仕業だった。
ローレンとの娘アミーナは、ファルクとニコラと共に、ローレンとの命を奪った犯人を見付けるべく、犯人候補の情報を集めていくのだが……。

魔術と呪いの世界だが、倫理で犯人を捜すファンタジーミステリ。 
 すきま
午前零時のサンドリヨン
相沢 沙呼 東京創元社

姉に連れて行かれレストラン・バー「サンドリヨン」で、マジックをする少女に目を奪われた須川。そのマジシャンは同級生の酉乃初だった。
いつもは教室でぼんやり窓の外を見ている酉乃が「サンドリヨン」で見せる笑顔に驚いた須川は、改めて酉乃に恋をする。
酉乃は須川たちが巻き込まれた学校で起きた謎を、マジックの手法で解き明かしていく。
孤独を選ぶ酉乃と仲良くなりたい須川が、不器用ながら酉乃と向き合おうとするのだが。
「空回りトライアンフ」「胸中カード・スタッフ」「あてにならないプレディクタ」「あなたのためのワイルド・カード」の4本のオムニバス。
第19回鮎川哲也賞受賞作。
 すきま
空き家課まぼろし譚
ほしおさなえ 講談社ノベルズ

水上都市・海市にある「水の都海市協会」空き家課に勤務する青年・間宮明。
海市の古い建築物再利用の仲介をするのが、空き家課。
ある日、明は三上課長の娘・汀の学校課題「お仕事見学」に付き合わされることに。営業先のバラ屋敷の所有者の元に向かう明たちだが、依頼人の息子に理由をつけて追い返されてしまう。
そして、二人は商売敵であるウォーターフロントの社員を目撃する。
バラ屋敷を守るため、明と汀は依頼人と直接会おうとするのだが……。
心に傷を持った人たちの、優しく切ない連作短編集。
 すきま
バーにかかってきた電話
東直己 早川書房

ススキノ探偵シリーズ2作目。
<俺>が馴染みのバーにいたら、思い当たる節のない女から電話がかかってきて、通帳を記帳しろという。<俺>が記帳してみると、10万円が振り込まれていた。
再びバーに女から電話があり、指定の会社に行き、「カリタ」という人物の行動を聞いてほしいという。<俺>が聞きに行くと、不穏な雰囲気になり退散したところ、地下鉄のホームで突き落とされて、殺されかける羽目に。
<俺>に電話をかけてくる「コンドウキョウコ」とは一体誰なのか……。

「探偵はバーにいる」のタイトルで、映画化された本作。紛らわしいことに、映画のタイトルは1作目の小説タイトルなのです。映画原作を読みたいのなら、こちら。 
 すきま
たまさか人形堂物語
津原 泰水 文芸春秋

祖父から店を譲り受けた澪。今は小売りは細々と、もっぱら人形修理を引き受けている。
人形好きのアルバイト冨永くんと、たいていの人形を治せる修復師・師村さんと共に店を開けている。
たまさか人形堂には、さまざまな壊れた人形を持ち込んでくるお客さんがやってくる。人形とその持ち主には、それぞれの思いやエピソードがあった。 
 すきま
萩を揺らす雨 紅雲町珈琲屋こよみ
その日まで  紅雲町珈琲屋こよみ

吉永 南央 文芸春秋

(萩を揺らす雨)
数えで76歳になる杉浦草。下火になっていた雑貨屋をたたみ、コーヒー豆と食器の店<小蔵屋>を始めた。
店には無料のコーヒーを試飲しに、近所の住人がやってくる。
ある日、客の話を聞いていた草は、近くのマンションでの不穏な話を耳にする。草は散歩がてら、マンションの周りを調べ始める。
(その日まで)
草は最近不機嫌だ。それも近所に和雑貨店<つづら>が開店したせいだ。おまけに、<つづら>は<小蔵屋>に対して営業妨害を仕掛けてくる。しかも不動産詐欺の話までもが草の耳に入ってくる。<つづら>の裏にいる<マルフジ>という会社は、草の昔の知り合いの会社だった。

おばあさん探偵のコージーミステリ。おばあさん探偵は大変である。捜査に町内を歩き回ると、徘徊老人と間違われるのである。それに憤慨しつつも、草は日常の謎を解明する。
 すきま
人形の部屋
門井 慶喜 東京創元社(ミステリ・フロンティア) 

主夫の八駒敬典が主人公の連作短編集。
元職場の先輩が足元が壊れたビィスクドールを持ち込んできた。展示のため借りた、部屋を模した箱に貼り付けられたビィスクドールを落として爪先が割れてしまったという。職場に言えず、敬典に泣きついて来たのだ。
敬典が壊したと勘違いした貸主に弁償しろと迫られ、敬典はそのビィスクドールの来歴について調べるのだが……。
 すきま
13時間前の未来(上・下)
リチャード・ドイッチ 佐藤 耕士(訳) 新潮文庫

何者かに妻を射殺され、殺人犯に仕立てあけられたニック。
警察署での取り調べ途中で、謎の男が現れ、ニックに金時計と手紙を渡す。その金時計は2時間時を遡り、1時間経過したらまた2時間時を遡るという代物だった。そして13時間を超えると、普通の時の流れに戻るという。
ニックは妻を助けるため、少しずつ時を遡り、事件が起きる要因を取り除こうとするのだが。

SFなんだけれど、ミステリー色も強いので、こちらに。
アメリカ版・吹原和彦(クロノス・ジョウンターの伝説)のような奮闘ぶりです。 
 すきま
道具屋皆塵堂
輪渡 颯介 講談社 

古道具屋・銀杏屋の長男・太一郎は、長男でありながら店を出て職を転々としていたが、弟の死によって、銀杏屋を継ぐことになった。
父の計らいにより、同じ古道具屋の皆塵堂に修行に出されるが、子供のころから幽霊が見えてしまう太一郎は、いわくありげな物が多い皆塵堂でも、やはり色々見てしまう。
現在の銀杏屋に引っ越す前のことを全く覚えていない太一郎だが、皆塵堂で働くうちに、昔の屋敷と向き合うことに……。
「道具屋には向かない男」「鰻の住み処」「鈍刀が切る縁」「その娘はやめておけ」「猫屋敷に棲むもの」収録。
 すきま
ゴーストハント
1<旧校舎怪談>2<人形の檻>3<乙女ノ祈リ>4<死霊遊戯>5<鮮血の迷宮>6<海からくるもの>7<扉を開けて>
小野 不由美 メディアファクトリー 

(旧校舎j怪談)
麻衣の学校にある旧校舎の会談を調査しに、渋谷サイキックリサーチのナルとリンが来る。成り行きでバイトをする羽目になった麻衣だったが、学校側はナル達の他に、元高野山のぼーさんと巫女の綾子、口寄せのできる霊能者・真砂子、エクソシストの神父ジョンまで呼んでいた。
(人形の檻)
家の中で者が良くなくなるという相談者が来て、渋谷サイキックリサーチの面々は現場の洋館に出向くが、そこにはすでにぼーさんと綾子の姿が。麻衣はその家の幼女が人形と会話するのを目にし、ぼーさんは人形を除霊しようと試みるのだが……。
(乙女ノ祈リ)
女学校である湯浅高校から、次々と怪奇現象の相談が渋谷サイキックリサーチに舞い込む。ぼーさんがナルに持ってきた話も、湯浅高校の怪奇現象で、件数の多さに異常を覚えた面々は、高校に調査に向かう。
(死霊遊戯)
校内のあちこちで怪現象が起きる、という緑陵こうこうに、渋谷サイキックリサーチといつもの面々が調査に行くことに。しかし、教師は非協力的な上、生徒にも口止めしており、調査は難航が予想された。
生徒会長の安原の協力により、麻衣たちは校内の怪現象や怪談情報を集めていくのだが……。
(鮮血の迷宮)
元首相の持ち物だという放置された山奥の館で、肝試しに来ていた青年が消えた。以前にもその館で人が消えたという話があり、渋谷サイキックリサーチや他の研究者・霊能者たちに調査依頼が入る。
いつもの面々で調査に入った麻衣たちだったが、館の内部は増改築が繰り返された、迷宮のようだった。そして、霊能者が1人消えてしまう。
(海からくるもの)
渋谷サイキックリサーチに、体に戒名が浮かび上がった幼女を連れた依頼人が訪れた。大きな料亭を営む依頼人の家では、当主が死に代替わりがある時、大量の死人が出るという。
麻衣たちはいつものように調査を始めるが、情報不足が否めない。そんな折、ナルが霊に取り憑かれてしまう。麻衣たちはナル抜きで調査を続行することに。

ホラーテイストのミステリー。怖いです。漫画もありますが、漫画で読む「鮮血の迷宮」の怖さといったらありませんでした。
 すきま
姫川玲子シリーズ
<ストロベリーナイト><ソウルケイジ><シンメトリー><インジブルレイン><感染遊戯> 
誉田 哲也 光文社

(ストロベリーナイト)
市街地にある溜め池脇の植え込みから、ビニールシートに包まれた死体が発見される。死体は拷問の末、殺害されたらしい。その上、水に沈めたときに浮かないように処理されていた。しかし、死体は植え込みに放置したらしい。
警視庁捜査一課警部補・姫川玲子は、少し前に監察医・圀奥に聞いた話を思い出し、殺害した者と隠ぺい作業する者がそれぞれいたのではないかと推測する。
聞き込みで浮上した「ストロベリーナイト」の実態とは……。
(ソウルケイジ)
玉川どれに放置されたワンボックス・カーから切断された左手首が発見された。左手首の持ち主は早々に判明したものの、被害者の周辺を調べていくうちに、次々と人間関係が明らかになっていく。
(シンメトリー)
姫川玲子シリーズの短編集。
「東京」「過ぎた正義」「右では殴らない」「シンメトリー」「左から見た場合」「悪しき実」「手紙」収録。
読了後に、それぞれのタイトルの意味が解る。
(インジブルレイン)
指定暴力団下部組織構成員の男の惨殺死体が発見される。最初は組同士の殺人かと思われたが、殺された男はそれに値しないような男だったという。
そんな中、姫川玲子たち捜査員に「柳井健斗」という名前が捜査上に出ても追及するなという命令が下る。
玲子は単身「柳井健斗」と9年前の彼の家族に起こった事件を調べ始める。
(感染遊戯)
捜査一課殺人犯捜査係の勝俣健作(ガンテツ)が15年前に捜査した事件、息子が殺人犯になったために倉田修二が警視庁を退職する直前に捜査した事件、姫川班にいた葉山が、姫川班解体直後に調べた将棋仲間の老人の小競り合い。
別々の事件の被害者が、元官僚であったり、その家族であるという共通点で結ばれる。しかし、なぜ犯人は被害者の住所や容姿を知ることが出来たのか……。
姫川玲子シリーズのスピンオフ。
 すきま
ロジャー・シェリンガム シリーズ
<レイン・コートの謎><ウィッチフォード毒殺事件><ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎><靴下殺人事件><毒入りチョコレート事件><第二の銃声><最上階の殺人><地下室の殺人><ジャンピング・ジェニイ> <パニック・パーティ>
アントニイ・バークリー 富塚 由美(訳) 晶文社

(絹靴下殺人事件)
作家で新聞にコラムも書いているロジャー・シェリンガムの元に、ロンドンに働きに出たまま音信不通になった娘を探す牧師から手紙が届いた。
ロジャーが調べてみると、コーラスガールをしていたその女性は数週間前に絹のストッキングで首を吊って死んでいた。しかも類似した事件が続いていると気付いたロジャーは、独自に調査を始める。
スコットランドヤードのモーズビー首席警部とも協力して、死亡者の周囲を調査していくのだが。
ロジャー・シェリンガムシリーズ4作目。
 すきま
硝子のハンマー
狐火の家
鍵のかかった部屋
貴志 祐介 角川書店

(硝子のハンマー)
介護会社ベイリーフの社長がセキュリティに守られた密室の社長室の中で殺された。続き扉の事務室で仮眠していた専務・久永に疑いが掛かり、担当弁護士となった青砥は密室の謎を解くため、防犯コンサルタントの榎本径の店を訪ねるのだが、榎本は一癖も二癖もある男で……。。

前半が青砥と榎本が密室トリックを解こうと試行錯誤し、後半は犯人が実行した手順が描かれている。榎本はセキュリティグッズを売る店をやりながら、明らかに泥棒が本業……。 
(狐火の家)
娘を殺害された男の担当弁護士に助言すべく、休暇返上で殺害現場に向かった青砥純子。
現場である男の家は、二階の窓が一か所開いているだけの、ほぼ密室状態だった。真犯人と30キロの金塊はどこへ消えたのか。純子は榎本に調査を依頼する。
「狐火の家」「黒い牙」「盤端の迷宮」「犬のみぞ知る」の4編収録。
 すきま
探偵・日暮旅人シリーズ
<探偵・日暮旅人の探し物><探偵・日暮旅人の失くし物><探偵・日暮旅人の忘れ物><探偵・日暮旅人の贈り物> 
山口幸三郎 アスキー・メディアワークス

(探偵・日暮旅人の探し物)
保育士・山川陽子はお迎えが遅くなった園児・百代灯衣を自宅まで送ることに。灯衣の自宅は繁華街の中にあり、父親の日暮旅人は「探し物探偵事務所」を営んでいた。
失くしたキーホルダーを旅人に探してもらった陽子は、その後も旅人親子の生活を手助けするのだが。
(探偵・日暮旅人の失くし物)
駅前商店街にある旅人たちが行きつけの洋食屋「KAGE」。旅人たちはそこの従業員で、マスターの甥・俊に「KAGE」の名物料理ハヤシライスの隠し味を見付けてほしいと依頼されるが……。

全4巻。
 すきま
アダム・ダルグリッシュ シリーズ 
<女の顔を覆え><ある殺意><不自然な死体><ナイチンゲールの屍衣><黒い塔><わが職業は死><死の味><策謀と欲望><原罪><正義><神学校の死><殺人展示室><灯台><秘密>
P・D・ジェイムズ 青木 久恵 他(訳) 早川書房

(神学校の死)
サフォーク州にある海岸に建つ聖アンセルムズ神学校の生徒が、砂に埋まって死んでいるのが発見された。事故死として処理されたものの、納得しない遺族の養父が、再調査を依頼してきた。
神学校のある地域に休暇で向かう途中であり、学生時代の休暇を聖アンセルムズ神学校で過ごしたことのある、ダルグリッシュ警視長が再調査することに。
ダルグリッシュの到着とほぼ同じくして、聖アンセルムズ神学校の閉校を推進する教会幹部も現れ、神学校内にいる人間の複雑な関係も顕わになっていく。
そして嵐の夜、鐘の音を聞いたダルグリッシュが駆け付けた教会に、死体が……。
(殺人展示室)
1920年代と1930年代の事柄についての博物館であるデュペイン博物館に、友人アクロイドに誘われて行ったダルグリッシュ。
殺人事件と裁判に関する資料がある「殺人の部屋」には死体が入っていたというトランクなども置いてあるが、観覧客の少ない博物館だった。
一週間後、デュペイン博物館のガレージが燃え、デュペイン家の次男ネヴィルが焼死した。ダルグリッシュのチームは事件を担当することになるのだが……。

作者が80歳を超えて書き続けているシリーズ。最初の方の本は廃刊になっているのもあるようですが、図書館には置いてあるかも。
 すきま
よろずのことに気をつけよ
川瀬 七緒 講談社

文化人類学者で「呪術」を研究している仲澤大輔の元に、砂倉真由という少女が訪れる。
彼女の祖父が何者かによって殺害され、家の縁の下から呪術符が埋められているのが見付かったという。仲澤は真由と共に、生前真由の祖父が家族にも秘密にしていた事柄を探って行くのだが……。
第57回江戸川乱歩賞受賞作。 
 すきま
 小さいおうち
中島 京子 文藝春秋

山形から尋常小学校を出てすぐに女中奉公にでたタキ。
作家先生のお宅から、若い奥様のいるお宅に移ったタキ。奥様の再婚について行った先は、赤い屋根の小さいおうちだった。
戦時色が強くなっていく中でも、小さいおうちの生活は平和に営まれていくのだが……。
作家先生に教え込まれた「優れた女中」の話を心の底に持ったタキが、時子奥様と板倉青年の仲に気付いた時、選択したこととは。

米寿を越えたタキが、女中時代に終の棲家と思い定めた、赤い屋根の小さいおうちでの思い出を書いた手記から始まるこの本。最終章ではタキの甥の息子が、タキの手記を元に縁の場所や人を探す。
第143回直木賞受賞作。
恋愛小説らしいのだけど、ミステリ色もあるので、こちらに。
 すきま
ラスト・メメント 遺品蒐集家・高坂和泉の日常
鈴木麻純 角川書店

遺品蒐集を趣味とする和泉は、死をテーマにした比良原倫行のシリーズ絵画<死者の行進>も蒐集していた。
散逸してしまっている<死者の行進>の一枚を所有している写真家・杠葉敦が絵を譲ってもらう前に病死してしまったため、和泉は杠葉の家に向かうが、そこには大人に不信感を抱く姉弟が住んでいた。
一度は追い返された和泉だが、杠葉の生徒だったという国香彩乃と共に、再び姉弟の元に向かうが……。
「幼児と死」「元老院議員と死」「貴婦人と死」の3話オムニバス。

タイトルにある<死者の行進>の一枚のタイトルと、内容にリンクがあったり。チクリと毒があるのは、この作者の他の作品でも感じるところ。こう、煮ても焼いても叩いても伸ばしても食えなそうな男が、このシリーズでも出てきます。
和泉が<死者の行進>を全部集めるまで続くのだろうか、このシリーズ。
鈴木麻純は「蛟堂報復録」シリーズ(現在6巻)の作者。