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「想像力は知識よりずっと重要なのです。」アインシュタイン
〜奇跡の言葉〜 鏡リュウジ 学習研究社


BOOKs(児童書・ファンタジー)日本作家編
幾つになっても読んで楽しいものです。子どもだけに読ませておくにはもったいない。
(順不同。どの場所に何があるかはスクロールしてのお楽しみということで。)
青文字は参考のためのジャンル分けです。内容についてはこの限りではありません。

こもれび村のあんぺい先生
茂市 久美子 作 あかね書房 (単行本)ドクターファンタジー

大学病院で働いていたあんぺい先生は道に迷って入った「喫茶 月夜の森」で診療所の医者をさがしているという張り紙をみつけます。山に囲まれたこもれび村で診療を始めたあんぺい先生の元には地元の患者さんの他に「森の患者さん」もやってきて・・・・・・。腰痛のきつねから、歯痛で空にあがれない竜などいろいろな患者さんが出てきます。活字が大きめで143頁という読みやすい一冊です。

空白
ナシスの塔の物語
みおちづる 作 ポプラ社 (単行本)成長物ファンタジー

砂漠の中のナシスという小さな村に暮らす少年リュタ。村の丘の上から余り出ることなく育てられ、村の皆に邪魔者扱いされるトンビ。ある日村に「歯車屋」を名乗る商人ドロスがやってきて、村の生活は変わっていくが・・・・・・。
実際に塔を作っていくのはトンビなのだけれど、このお話はリュタの「塔」の話でもあれば、リュタの父親の「塔」の話でもある。そしてナシスという村の「塔」の話でもあるのです。
空白
ブンダバー1〜10
ブンダバーと仲間たち(1ブンダバーとモモ 2ブンダバーとタンちゃん 3ブンダバーのねこの手かします 4ブンダバーとわんわんわん 5ブンダバーのいってきまーす! 6ブンダバーのただいまー! 7ブンダバーとにゃんにゃんにゃん 8ブンダバーとネズミのワゴナー)
くぼしま りお 作 佐竹 美保 絵 ポプラ社(単行本)猫物ファンタジー

拾ったタンスから飛び出した黒猫とタンスを拾った夫婦と彼らが住む町の住人の話。2本足で立ち話の出来る陽気な黒猫です(「みかん絵日記」を彷彿とさせますな)。一作目はキャラクターの紹介といった感じです。2冊目からブンダバー本格始動、生きているタンスのタンちゃんとサーファー目医者ポンちゃん登場のお話です。どんどん登場人物が増えていきます。

本編は一段落して、ホルムの仲間たちの本が出始めました。こちらではブンダバーが脇役です。
モモの恋のお話や、タンスのタンちゃんのお話など。「ブンダバーとタンちゃん」ではホルムの町を襲った大雨のエピソードが。この本だけでも読んで欲しいくらいの、いいお話です。これは、大人が読んだら泣ける。ラスト数行の男の子とおしじさんとの会話がとてもいいのです。
何の変哲もないキーホルダーを貰ったおしじさんのこれからを、とても応援したくなります。

空白

裏庭
梨木香歩 理論社 (単行本) 癒しファンタジー

六年前、バーンズ屋敷の庭にある池が原因で双子の弟を亡くした照美。友人の祖父の昔語りでバーンズ屋敷の大鏡の向こうに「裏庭」があると知り、次第に足が向いていく。大鏡の前で聞こえた「フーアーユー?」という言葉。それに答えたとき、照美の前に「裏庭」への扉が開かれる。
第1回日本ファンタジー大賞受賞作。この作品が余りにも素晴らしすぎたためか、この後この賞で大賞はなかなか出なくなる(笑)。
自己再生癒し系ファンタジー。荻原規子の「これは王国のかぎ」もそんな風に言われますが、とにかくコンタクトレンズが外れるが如く目から鱗のファンタジー。
同じ作者の「西の魔女が死んだ」小学館もお勧め。

空白

まうんてんばいぬ1〜2 
ながた のぶやす 作  自由国民社 (単行本)
 絵本

小振りな絵本です。「どうぶつ」と「どうぐ」がくっついた「どうぐつ」たちのお話。数種類のどうぐつの掌編集。
とにかく色が綺麗です。基本的にみんな正面むいていますし。絵本ですので、絵が主体。男の子にもウケは良いようです。ちなみに「まうんてんばいく」と「いぬ」がくっついて「まうてんばいぬ」です。読んでほっこり幸せになれる絵本です。

空白

双姫湖のコッポたち
緑の森のコッポたち 
松原由美子 作 広瀬 弦 絵 小峰出版(単行本) ファンタジー

青姫湖に住むコッポのキーノは仲間と違い、毛が銀色がかっている。すでに亡くなった父親に似たらしいのだが、父親はどこからきたのか解らないコッポだった。唯一の手がかりは恐れて誰も近づかない「まものの木」。祭りの後、キーノは母親に黙って一人で旅に出るのだった。
広瀬弦のイラストが可愛い・・・。最後にはちゃんとお母さんにぎゅうぎゅう抱きしめてもらえるキーノなのです。

空白
龍使いのキアス
浜たかや 著 佐竹美保 絵 偕成社(単行本) 
ファンタジー

巫女見習いが行う「呼び出し」の儀式で、何物にも「呼び出されなかった」キアス。
モールの神殿を出て、300年前の先輩巫女マシアンを探す旅に出るのだが、そのうち
自らの出生の秘密をも追うことになる・・・・・・。
これも分厚いですね。
キアスという巫女見習いの少女の約1年間のお話。濃い。ホントに1年間か!?ってくらいに濃い。でも、読了後充実感のある一冊です。
空白
怪盗クロネコ団あらわる!
怪盗クロネコ団のあまい罠

岡田貴久子 作 スズキコージ 絵
 理論社(単行本) ファンタジー

活字が大きくて、あっと言う間に読めます。しかし、意外な面白さ。
トランプの婆抜きとそろばんが得意な青年が、クロネコ団に協力(騙されて)して、ジャックの豆や、ヴィーナスのピアスを手に入れる(手に入れ掛ける、というか)。おいしいところは、クロネコ団がすべて持って行ってしまうのだけれど、駆け引きのドキドキなんかは素晴らしい。
子供向けなのだと思うのだけれども。青年の悔しがり方は大人の悔しがり方かも・・・。大人も楽しめる童話です。
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にだんベッドそらをとぶ
シュシナーナとサバリコビレ

小林裕児・絵 松居友・文  ベネッセ (ハードカバー)
ファンタジー絵本

名前がね、凄い。シュシナーナもサバリコビレもそうだけど、チビッチャレとかヌカッピラとかプルチリパとかナリシムシムシとかパリポリパとかシナポリピとかライアのトリプルピとかチリチリドゥーとかいるんだよ。一度じゃ覚えらんないよ・・・・・・。
シュシナーナはでんきそーじきで空を飛ぶ。それをサバリコビレに取られちゃった話が、「シュシナーナとサバリコビレ」。ライアのトリプリピがプルチリパをチャーチャカンから取り返す話が「にだんベッドそらをとぶ」。どっちもラヴストーリーなんじゃあ?って話です。両方仲間で力を合わせて取り戻す話。う〜ん友情だ。
独特の絵と独特の文章。直接読まねば何とも言えない(笑)。
そういう激しさがあるね・・・この絵本。
空白
ぐりとぐらとすみれちゃん
中川李枝子・文 山脇百合子・絵
 こどものとも  福音館書店 絵本

おなじみの「ぐりとぐら」シリーズ。
初めて人間の女の子が出た話。・・・サンタクロースは人間じゃないの?それとも、女の子は別物なのかな?すみれちゃんが持ってきたカボチャはマサカリカボチャだったんでしょうか・・・。ねえ?

おいしそうなカボチャが出てきます。そして、ぐりとぐらと仲間たちは温かいのです。
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童話物語
向山 貴彦 作 宮山 香里 絵 幻冬舎 (単行本・文庫) ファンタジー

貧しい村トリニティーに住む、孤児のペチカは村人にいじめられながらも懸命に生きていた。僅かな食事を得るため、守頭にいびられながら仕事をする毎日。ある日仕事仲間のルージャンの意地悪で仕事に遅刻したペチカは、教会の釣り鐘塔の掃除を言いつけられる。やっとのことで高い釣り鐘塔の天辺にたどり着いたペチカの目の前に妖精が現れ、それを機にペチカの生活は波乱に満ちたものになっていく・・・・・・。
現在単行本と文庫があり、文庫のほうは上・下巻に分かれています。この物語自体が「大きなお話の始まり」と「大きなお話の終わり」という二つのくくりになっているので、丁度そこで半分こ。
有名なんだけれど、意外と知られていないかもしれない物凄い本。
どのあたりが物凄いのかというと、内容も凄いけど、装丁も凄い。これでもかというくらい手が入っている。これ、ホントに商業本なのかしらとはじめ思ったくらい。自費出版本かと思うほど。
なにしろ、カラーでお話世界の地図があり、カラーで挿絵が何枚も入っていて、章や行の区切りにはモノクロでイラストがふんだんに入っている。世界観も物凄い。貨幣制度・時間制度・距離制度がしっかり決まっている。地方の食生活についてもきちんと設定がある。素晴らしい。
これはもう、誰かに贈りたくなってしまう一冊。
空白
こそあどの森の物語
<ふしぎな木の実の料理法><まよなかの魔女の秘密><森のなかの海賊船><ユメミザクラの木の下で><ミュージカルスパイス><はじまりの樹の神話><だれかののぞむもの><ぬまばあさんのうた><あかりの木の魔法><霧の森と謎の声>
岡田 淳 理論社 (単行本) ファンタジー

個性的な、こそあどの森の住人たちのお話。ウニマルという船の形の家に住む少年スキッパーを中心に話は動きます。無口で人付き合いの苦手だったスキッパーが、おせっかいな住人たちと、頁ごと一冊ごと成長していきます。隠れた複線に最新刊が出るのが楽しみなシリーズ。
この作者の作品は独創性が高いです。そして、このシリーズは珍しく学校が関係しないお話かも。
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さよならワルガキング
笹生 陽子 作 じびき なおこ 絵 汐文社 (単行本)今時小学生ライフ

今時の男の子と片付けられない話かも。
親のサイフに手を付けたことで、塾に入れられた和哉(おれ)。ワルにあこがれる和哉になついた橋本少年は少し浮世離れていて、和哉は混乱するのだが・・・・・・。
人間痛い目見ないと解らない事もある、のような。痛い目見て目が覚めた君は中々素敵だ。
ちなみにワルガキングはトレカ(トレーディングカード)らしいです。流行りものネタですねえ。
(そのうちチョコエッグネタもでるのかな・・・・・・)
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メルティの冒険 遥かなるアーランド伝説
吉村 夜 作 佐竹美保 絵 ポプラ社 (単行本) ファンタジー

「豪腕」メルティ・「夢追い人」エイシュラ・「剣神」ゼルハルト・盲目の魔女ウィヴィナスが願いを叶えてくれるという「願いの泉」を求めて、伝説の地アーランドを目指す冒険物語。
一瞬邦訳された話なのかと思った本。名前の付け方もだけれど、文体が語り口調で書かれている所が。それぞれがコンプレックスを乗り越える内容なのだけれど、友情あり、恋愛あり、ホラーあり、色々な要素が含まれていたりする。本の装丁も面白いかも。
空白

ユタとふしぎな仲間たち
三浦 哲郎 新潮文庫 (文庫) 座敷わらし物

舞台化もされていますね。
なぜこれが目立たない文庫形式なのだろうと思ったりします。薄っぺらいし。
東京から湯ノ花村に引っ越してきた勇太少年と九人の座敷わらしのお話。登場人物がいきいきしているんです、これ。背景がしっかりしているからなのかなと思いますが。「座敷わらしは●●なんだよ」と書いてあるお話。「遠野物語」には女児の座敷わらしもでてくるけれど、こちらは男児のみ。ちょっとおじさんくさい座敷わらしだったりします。なにしろユタ(勇太)より年上だから。
解説を今江祥智氏が書いています。

空白
声が聞こえたで始まる七つのミステリー
小森 香折  アリス館 (ソフトカバー) ミステリー・ファンタジー

本当にタイトル通りの短編集。少し不思議なお話たち。
この人も江國香織さんと同じ毎日新聞小さな童話大賞受賞者(江國さんの時は名称が違うけれど)。
しかも第12回、第14回と二度受賞(第12回の時はもう一人受賞者がいた)。とても根気強くこの賞に挑戦された方です。
童話・掌編・短編を書かれていて数冊出版されています(「きょうりゅうサイダー」「水の扉」など)。あと童話翻訳も(「色の女王」など)。
丁寧に書かれた印象を受ける作品群です。邦訳された「色の女王」は色の三原色を扱ったもの。
レオ・レオニは二原色でしたね(「あおくんときいろちゃん」)。色の三原色は赤・青・黄色。ちなみに光の三原色が赤・青・緑ですね(色彩学ですね・・・)。
私個人としては、第14回受賞作の「トーマスの別宅」(凄いタイトルです!)が入った掌編・短編集が出版されないかと思っています(まだ出ていないと思う)。タイトルと同じく中身も凄いのです、深いのです。
ところで、この方以前は「橋本香折」名義でした。本の検索をするときは両方の名前でしないと検索漏れする恐れあり。ご注意を。読んで損なしの作家の一人です。
空白
あらしのよるにシリーズ
あらしのよるに・あるはれたひに・くものきれまに・きりのなかで・どしゃぶりのひに・
ふぶきのあした・まんげつのよるに

しろいやみのはててで あらしのよるに特別編
木村 裕一 作  あべ 弘士 絵  講談社  解釈色々狼とヤギ

嵐の中で非難した小屋で偶然に出会った、狼のガブとヤギのメイ。お互い真っ暗闇の中で目も利かず、鼻風邪で鼻も利かない。二匹はお互いが何者か解らないまま、友情を深めていく。
「ごちそうだけどおともだち」の関係の二匹。仲間には決して言えない「秘密の友達」になるのだけれど・・・・・・。
8年かけて完結したシリーズ。二匹の友情と、それぞれの仲間たちの感情が比例しないのが悲しいところ。
作者はガブもメイも男の子のつもりで書いていたようですが、読者の解釈は様々で、恋愛ものと受け取る人達もいるようです(日本語は英語ほど頻繁に代名詞出てこないですからね〜)。
〜です・ます調のメイと、〜っす調のガブ。正直こういう絵本・童話で「〜っす」と喋る登場人物は珍しいかもしれません(笑)。お互いの友情を守るのに一生懸命な二匹が愛しくなります。
2005年冬に映画公開。フライヤーのメイが物凄く可愛い・・・・・・。
空白
ぼくの・稲荷山戦記
夜の神話
水の伝説

たつみや 章 講談社  (単行本)ファンタジー

シリーズ三部作。登場人物はすべて違いますが、テーマは同じ。
それぞれが大切なもののために、少年達が「戦い」ます。
大人たちが壊していったものを壊していこうとするものを、守るために。
一度は読んで考えてみてほしい、三部作です。
・・・・・・しかしこの作者は作風の幅が広いですね(笑)。他にもシリーズものを書いておられます。
文庫でも登場しています。
空白
ホウ博士とロボットのいる町
松村 美樹子 作  江川 智穂 絵 ポプラ社 (単行本) ファンタジー

小さな町のかたすみで、一人いつも研究に明け暮れているホウ博士。町の人たちと殆ど付き合いもせず。ホウ博士は研究を盗まれることを恐れて「どろぼうよけロボット」を作るが、ある日ロボットに傘を差し掛ける女の人メイさんに出会ってから、ホウ博士のかたくなな心は少しずつ変わっていく。
ホウ博士の作るロボットたちは、とにかく一生懸命働くため、色々とトラブルを引き起こします。
しかし、博士に愛されていると思う(笑)。博士もロボットたちに愛されています。
少しホロリとして、あたたかいお話です。
空白
でこぼこフレンズ(テレビミニ絵本 NHKおかあさんといっしょ)
(2〜3キャラクター分が合わさって1冊になっています。「○○と○○」というように)
小学館 厚紙絵本

そのまんま「おかあさんといっしょ」のなかでのテレビ絵本を、紙の絵本にしたもの。
子供に人気あるらしいですよ。小さい子への贈り物には喜んでもらえるかも。
やはり、すべてのキャラクターは正面を向き、はっきりとした色使いがポイント。子供は文字より絵を見ます(と、いうか「絵本」である以上「絵」が主体でなくてどうします)。
個人的には「じょうろう」と「はなはなマロン」が好きです・・・。
空白
少女海賊ユーリ
<なぞの時光石><時のとまった島><海竜のなみだ><天使のいのり><黒いゆうれい船>
<さまよえる宝島><指輪のちかい><剣にかがやく星><流星の歌><未来へのつばさ>
みおちづる 永盛 綾子 画 フォア文庫 ファンタジー

オーデニア国に滅ぼされたラドニア島の領主の娘ノエルは、奴隷をも売買する大商人ピップスに、ザリア石の指輪を奪われそうになったところを、ユーラスティア号の船長ユーリに助けられる。
海賊波止場で船に残されたノエルは、月明かりの下、ザリア石の指輪に未来を見る。それと合わせて「ユーリが危ない」という預言者カラザンの言葉を聞いたノエルは、危険を顧みず波止場に飛び出すのだった。

1巻目はまだまだ序章にすぎない感じです。これから広がっていく世界に期待大。
「ナシスの塔」と同じ作者です。
空白
パンのかけらとちいさなあくま リトアニア民話(こどものとも傑作集)
内田莉莎子 再話 堀内誠一 画 副音館書店

いたずら心で、貧しいきこりのパンのかけらを盗んだちいさな悪魔は、ほかの悪魔から、きこりの役に立つまで戻ってきてはいけないと怒られてしまいます。
きこりのもとに行き、謝った小さな悪魔は、きこりの役に立とうと奮闘するのですが・・・。
最後のページで小さな悪魔が、大きな悪魔達に誉められている絵があるのが、ほほえましいです。
空白
てんのくぎをうちにいったはりっこ(こどものとも傑作集)
かんざわとしこ ほりうちせいいち絵

みなしごだったはりっこが、くまのばあさんと暮らす世界の丸天井は釘で支えられている。
ある日、その釘がゆるんできて、世界はぐらぐら揺れ出した。誰かが丸天井に釘を打ち込みに行かなければ、天が落ちてくる!
はりっこは、ひいひいじいさまの形見のハンマーを携えて、丸天井をめざすのだが・・・。
はりっこのハンマー振るいが格好いい!イラストが綺麗で、細かいところまで書き込んであります。
何より、表紙のはりっこの、勇姿に目が釘付け。
空白
妖怪アパートの幽雅な日常1〜10
妖怪アパートの幽雅な食卓 るり子さんのお料理日記

香月 日輪  講談社  

両親に先立たれ兄弟もいない夕士は寮付き高校合格後、肩身の狭かった親戚の家からの独り立ちを計画していた。ところが寮は火事で焼け、再建するのに半年はかかるという。それでも独り立ちを諦めきれない夕士は、親切な不動産やから紹介された「妖怪アパート」に入る事に。しかし、そこに住んでいたのは風変わりな人間と幽霊達だった。
2巻目以降では魔道書「プチ・ヒエロゾイコン」のマスターに選ばれてしまった夕士。ブック・マスターとしての素質があると解り、修行の日々が始まります。親友・長谷くんに「妖怪アパート」の日常を受け入れてもらって一安心も束の間、夕士の通う学校の講堂の小部屋にオバケが出るという話が持ち上がり、夕士は「プチ」の妖魔フールと共に様子を見に行くのだが・・・・・・。
長谷くんがアパートに遊びにきているときは、夕士・クリ・長谷くんの三人で川の字で寝たり微笑ましくて堪らないです。いやーしかし、長谷くんの愛は時に痛いなあ〜と、思ったりする(笑)。でもそれって愛されてるんだよ、夕士くん。
空白
カラクリ荘の異人たち
<1〜あるいは賽河原町奇談〜><2〜お月さんいくつ、十三ななつ〜><3〜帰り花と忘れ音の時〜><4〜春来るあやかし〜>

霜島ケイ GA文庫

父親の再婚家庭に馴染めず、父の知り合いのアパートに入ることになった太一。目的地のバス停で、バスを下りると、そこは異世界だった……。
目の前で半魚人紳士が歩いていても、叫びだしたりしない、違った意味でズレている太一。
初っ端から異世界の洗礼を受けているのですが、妖怪に助けてもらってアパートについていたりしています。レトロな雰囲気の建物に個性的な住人達です。

アパートで妖怪というと、上記の「妖怪アパートの幽雅な日常」を思い出しますが、妖怪の種類も質も、ストーリーの柱も違うので大丈夫。。
空白
トリツカレ男
いしいしんじ 新潮社文庫

「プラネタリウムのふたご」でガツーンとショックを受けた人でも、いしいしんじ初読み!な人でも抵抗無く読める、いしいしんじの本。
薄い本です。活字も大きいので読みやすいです。あっという間に読めるのですが、読み終わるのが勿体無くなる、そんな本。

ジュゼッペは何にでもトリツカレるトリツカレ男。オペラに三段跳び、ハツカネズミの飼育に、サングラス集め。その他にも沢山トリツカレてきたジュゼッペが一目惚れしたのが、東の国からきた少女ペチカ。
ネズミにペチカの心の影を見つけ出してもらっては、彼女のために出来る事を、ペチカには内緒で実行していくジュゼッペ。ただペチカが笑ってくれる事を願って、一生懸命になるジュゼッペの一途さ。
このジュゼッペという男は本当に凄い!皆に馬鹿にされ、愛されるジュゼッペ。
これはラブストーリーです。ぜひ、読んでラストシーンを知ってほしいです。

2007年の演劇集団キャラメルボックスクリスマスツアーの演目でもあります。
ネズミもインコも人間がやる!DVDが発売されています。
空白
新編クロノス・ジョウンターの伝説
君がいた時間ぼくのいく時間
〜タイムトラベル・ロマンスの奇跡〜 
クロノス・ジョウンターの伝説∞インフィニティ
梶尾真治 朝日ソノラマ (単行本) SF

SFファンには有名なカジシン。そしてクロノス・ジョウンター。
「クロノス・ジョウンターの伝説」は「この胸いっぱいの愛を」として映画化されましたが、小説と映画は全く内容が違います。
しかし、映画ノベライズ(小学館文庫より出ています)も原作者が書くという荒業を行使した梶尾真治。そんなこと、普通しない。作者のこの作品へのこだわりを感じます。

「クロノス・ジョウンターの伝説」は「吸原和彦の軌跡」「布川輝良の軌跡」「鈴谷樹里の軌跡」の3つのお話で構成されています。出会うことは無いけれど、年表が書ける位重なる時代に存在しています。
「君がいた時間ぼくのいく時間」はクロノスの後継といわれるお話。
SFのパラドックスは!?というタイムトラベルの鎖を知る人にはドキドキ物の一冊です。この2冊は合わせて読んで欲しいです。
彼らがクロノス・ジョウンターに乗り込むに至る覚悟を、是非見ていただきたい。

ちなみに「クロノス・ジョウンターの伝説」は「クロノス(吹原)」「あしたあなたあいたい(布川)」「ミス・ダンデライオン(鈴谷)」として2005〜2006年に演劇集団キャラメルボックスにて上演されています。
「君がいた時間ぼくがいく時間」は2008年上演。
なまらカッコいいクロノス・ジョウンターを見たい!という方はDVDになっていますので、どうぞ。泣けます。

「クロノス・ジョウンターの伝説∞インフィニティ」は既刊の吹原・布川・鈴谷・秋沢の話に、栗塚・野方の書下ろしを追加。これからクロノスシリーズを購入される方は、この本を買えば全てを読めます。
空白
僕僕先生
僕僕先生
〜薄妃の恋〜
僕僕先生〜胡蝶の失くし物
僕僕先生〜さびしい女神
僕僕先生〜先生の隠しごと
仁木 英之 新潮社 (単行本)

王弁は22歳になるが、親のすねを齧り、仕事もせず家でぼんやりすごしている。
そんな彼に業を煮やした父親に、ある日里山の一つである黄土山に住み着いた仙人に、供物を持っていくように頼まれる。
山を登った王弁が出会ったのは、庵の屋根に座っていた少女だった。仙人は老人だと思い込んでいた王弁だが、黄土山の仙人は少女・僕僕だったのだ。
僕僕に「仙骨はないが、仙線はある」と言われた王弁は、僕僕について旅立つ事になるのだが……。

僕僕と王弁の会話が楽しい、仙人と弟子本。
王弁が少女姿の僕僕に恋心を抱いたり、混沌に危険な目に遭わされたりと、ぼんやりとした日常とは打って変わった生活に、少しずつ王弁は変わっていきます。
幸せを感じるラストページまで、飽きずに読める一冊。
空白
サンタクロースが歌ってくれた
成井 豊 主婦と生活社  宙出版 (単行本)

冬休み中、学校のワープロで、こっそり小説を書いていた成井先生。
小説の中では、芥川龍之介と平井太郎(のちの江戸川乱歩)が颯爽と登場し、宝石を盗んだ犯人・黒蜥蜴を名指ししようとしていた。しかし、いざその時になると、黒蜥蜴はその場から消えうせていた……。
小説の内容に不満を抱いた黒蜥蜴が、小説の世界から飛び出したのだ。
黒蜥蜴の後を追いかけ、小説から飛び出した龍之介たちは、小説の作者である成井先生や、モデルとなった生徒達を巻き込んで、クリスマス・イブの東京中を駆け回る。
小説の中に戻るタイムリミットは夜中の12時。それまでに彼らは黒蜥蜴を連れ戻せるのか……?

芥川龍之介、江戸川乱歩が好きな人は、章タイトルからニヤけてしまうかも。面白く楽しい本です。
1990年発行の本で、現在絶版中ですが、古本(ユーズド)では手に入るし、図書館には置いてあるのではないかと思います(江別市の情報図書館にはあります)。
また、戯曲(元々お芝居なので)は刊行されております。『嵐になるまで待って』(成井豊・論創社)に併録されています。内容は少し異なりますが。

成井豊さんは演劇集団キャラメルボックスの脚本・演出家です。
このお話、役者の名前がそのまま出ているんですね。「大森さん」「西川君」「上川君」「石川さん」とか。「成井先生」もそのまま。
旗揚げしたばかりの劇団にとっては、役と役者の名前を同じにするというのは、覚えてもらうのにいい手段だと思う。TEAM NACSも『LOVER』まではそのままでしたねえ。
キャラメルボックスは旗揚げ20周年を超えましたが、凄い事です。
すきま
君の心臓の鼓動が聞こえる場所
成井 豊 ポプラ社

40代、テレビドラマ脚本家、現在独身の根室典彦。
深夜までの打ち合わせの後、自宅でマネージャーの恵庭真知子とコーヒーを飲み、いざ告白!というところで玄関のチャイムに邪魔される。
ドアを開けると、そこには14年前に別れたきりだった、娘のいぶきが立っていた。
19歳に成長したいぶきは、唐突に自分の書いた小説を取り出し、「出版社を紹介して!」と根室に頼むのだが……。
キャラメルボックス2008年クリスマスツアーの小説版。
これ、札幌公演が初日だったのですが、登場人物の苗字がみんな北海道の地名です。
根室・日高・恵庭・砂川・奥尻・亀田・小樽・岩見沢……。初版ルビに関してツッコミを入れるとするなら、奥尻が「おくじり」、砂川が「すなかわ」になっちゃってるんだよね。芝居上では正しい読み仮名でしたけども。だけど、亀田半島どこにあるのか知りませんでした。

成井小説では、再販された「あたしの嫌いな私の声」(芝居タイトルでは「嵐になるまで待って」)もお勧めです。お芝居とはクライマックスが違うのですよ(アレはお芝居では出来ない……)。
すきま
亀天国
木村 麻菜美 日本文学館 (文庫)

冷蔵庫を開けたら、葱を盗み食いしている蛙がいた!「俺」は菓子で蛙と「美味しい取引」をし、亀天国へと連れて行ってもらう。そこで「俺」が目にしたものとは……。
ガリバー旅行記in亀の国、のような。
生々しい文体で話を書く方ですね。匂い立つような感じ。いいですね。
表題作の「亀天国」は中篇、他のお話は掌編です。
中・短そつなく書かれています。この人のこれからの作品が楽しみです。
ちなみに江別の人なんですね、この方。これがデビュー作じゃないでしょうか。
「亀天国」本の薄さの割りに、いいお値段するんですが、バス停と緑色の蛙の白い表紙でお勧めです。
ぐりぐりと痛い所に塩を塗るような話が好きな人はどうぞ。それでもってその後、傷口をちゃんと洗い流してさっぱりしたい!と思う方にもどうぞ。
すきま
麦ふみクーツェ
いしいしんじ 新潮社(文庫もあり)

音楽に取り付かれている祖父に、素数に取り付かれている父に、人より格段に体が大きく、猫の鳴きまねが上手い「ねこ」。彼らと町の人々の悲喜劇。

ネズミが異常に出てきますので、ネズミ嫌いの人は覚悟して読んで下さい。
いしい作品には、個性的な人々が沢山出てきます。この作品にも、着ぐるみを着ているような先生や、先生の義娘みどり色などなど。
最初からきちんと読み通していくと、じんわり泣けてきます。
すきま
病気の魔女と薬の魔女
病気の魔女と薬の魔女 ローズと魔法の地図
岡田 晴恵  学習研究社 (単行本)

国立感染症研究所研究員が書いた、強毒性インフルエンザH5N1をテーマにしたファンタジー。
感染症の歴史や、コンタギオン(種)の種類、新型インフルエンザの発生の仕方、ワクチンの作り方などが解りやすく書かれています。

若い薬の魔女ローズは、薬草魔女のファーマ先生とカビから薬を作る専門家アン先生の下で修行中。
ワルプルギスの夜(年1回ブロッケン山で行われる魔女の集会)の帰り道、ローズはお月様から、病気の魔女達の企みを教えられる。病気の魔女達はインフルエンザH5の魔女のコンタギオン(種)を、人間に撒き散らし、大疫病を起こして沢山の人間を死なせるつもりだというのだ。
ローズから話を聞いた、ファーマ先生とアン先生は、ローズをワクチンの魔女ワッカ先生の元へと送り出す。

小中学生向けの本のようです。出来れば、お小遣いで買いやすい新書タイプで、値段を抑えた物が出るといいかも。これだと大人が買ってあげないといけない本の値段なので。税別1500円。
学校の図書館にはいいですね。診療所の待合室に置くには少々頁数があります。

最近行われている小学校朝の読書時間に少しずつ読むとか。ところでこれ、10分くらいで読みきれない本は駄目なんでしょうかね。以前、本屋で厚い本を買って欲しいと言った子供に、親が「10分で読みきれないでしょ」と渋っていたのを見たことがあるので。つまらない事を言うなあと思ったんですけどね。
あと図書館で子供に読ます本を選んで欲しいという親。そんなのは子供をつれて来て選ばせればいいだけだと思う。読みたくない本はどうしたって読まないし、読みたい本ならば、辞典使ってでも読みますよ。
そんなね、親の理想の本を子供が素直に読んだりしませんよ。
小学校の頃の読書の時間、他の子より厚い本をその子達より早く読み終わったら、教師に信じてもらえなかった事を思い出しちゃったね。読書速度の尺度を決めるのはアンタかい、と子供心にイラッとしましたが。本までお手てて繋いで読み終わることも無いだろうに。読書は自由であるべきだ。

どんな本であれ、自分が好きなお話を、読み終わるのが勿体無いなあと思いながら読む楽しみを、子供に教えてあげて欲しいですね。
 すきま
ようこそ古城ホテルヘ〜湖のほとりの少女たち〜
ようこそ古城ホテルヘ2〜私を探さないで〜
紅玉 いづき 村松加奈子(絵) 角川つばさ文庫 

「帰る場所」のない少女4人が、「古城ホテルの女主人にならないか?」と持ちかけられ、女主人試験を受けることに。
魔山を下りた魔女、元盗賊、元軍人、亡国の王女の四人は、振り分けられた客を持て成すため、それぞれが思いつく最高の持て成しをするのだが……。
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五龍世界 霧廟に臥す龍
壁井 ユカコ ポプラ社

ユギは5歳の時に、口減らしのため道士の廟の前に置き去りにされた。
柄は悪いが情に厚い趙道士を師匠に、見習い道士として成長したユギ。兄弟弟子の左慈とともに、師匠に仕えていたある日、幼子を誘拐したという金髪の牧師を捕える羽目になる。
牧師は西域人だというのに蠱憑きらしく、おまけに彼が誘拐してきたという幼子は龍人の子供だった。ユギたちは一先ず幼子を預かる事にするのだが……。
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夜の写本師
乾石 智子 東京創元社

右手に月石、左手に黒曜石、口に真珠を含んで生まれてきたカリュドゥ。
産婆でもある女真道士エイリャに引き取られ、育てられたカリュドゥだが、真道士の素質がある子供を探す<収穫めぐり>の後、エズキウムを治める真道士アンジストにより、エイリャと幼馴染のフィンを殺されてしまう。
カリュドゥはパドゥキアに渡り、真道士ガエルクの弟子になるが、魔法の見極めを間違い、姉弟子セフィアを失い破門になる。
その後、写本師イスルイールの弟子になり、真道士とと同等の力を持つという<夜の写本師>を目指していく。
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竜宮ホテル 迷い猫
村山 早紀 三笠書房

ファンタジー作家・水守響呼は、大家から耐久性に問題がるので、長年暮らしたアパートから転居するように頼まれてしまう。
とりあえず、締め切り和際の原稿を抱え、近所のコーヒーショップで執筆していた響呼は、顔見知りの編集者・錦織寅彦と会う。寅彦に送ってもらい帰宅すると、アパートは見事に崩れ落ちていた。
そこで響呼と寅彦は、猫耳と尻尾がある少女を保護し、寅彦の家が所有する竜宮ホテルに向かう。不思議なものが集まるという竜宮ホテル。
自治は響呼は先祖が妖精の祝福を受けたおかげで、左目で人には見えないものが見えるのだった。
人が好きなのに孤独に生きてきた響呼が、少しずつ左目で見える世界を受け入れ始める、優しくて小さな奇跡のお話。
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昼寝の神様
松尾 佑一 角川書店
 
昼寝神社におわす昼寝の神様は、ロックな神主と娘巫女と神使の柴犬・銀飯(ぎんしゃり)に祀られていた。
神無月に出雲に向かった昼寝の神様は、駆け込んだトイレでトイレットペーパー切れの危機を、トイレの神様に救われる。
ドジなトイレの神様は、汚れを洗い流すと清楚でかわいい神様だった。昼寝の神様はトイレの神様に恋をするが、彼女には付きまとうセラミックの神様がいた。
トイレの神様を忘れられない昼寝の神様は、偶然知ったトイレの神様の勤め先に通い、彼女のためになろうとするが。