会長挨拶

北海道航空医療ネットワーク研究会 会長  浅井 康文(札幌医科大学名誉教授)

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 当研究会では、2017年7月から国庫補助事業の「へき地保健医療対策等実施要綱」に基づき、北海道からの委託を受けメディカルウイングによる患者搬送事業を実施しておりますが、2019年5月からは民間企業の寄附金を活用して国庫補助事業では対象外となっている道外から道内への搬送や小児バックトランスファーを研究運航事業として合わせて行っております。

 これまでの搬送実績の中で、特に小児先天性疾患の患者の搬送が多い点に着目しております。
 広域な本道においては札幌などの都市部に集中する高度専門医療機関での手術・治療のニーズが高く、特に地域での医師不足・偏在や少子化を背景とした小児周産期医療の集約化が進むことが今後も予想されますので、高度専門医療機関の病床を安定的に確保することが求められます。

 将来を担う子どもたちが地域で安心して生活できる社会システムとして、メディカルウイングを中心とした航空医療体制を充実・発展させることが広域で地域格差が顕著な本道の地域医療を補完する一助になると考えております。

 小児バックトランスファーのメリットは、搬送時間の短縮や患者への身体的負担軽減に限りません。手術・治療が終えた患者をできるだけ早期にメディカルウイングで地域の専門医療機関に搬送し治療を継続できれば、母子分離期間も短縮され患者家族の経済的、身体的負担の軽減にもつながるとともに、小児の高度専門医療機関の病床を安定的に確保でき、数少ない医療資源を有効活用することが可能となります。
 本道の小児・周産期医療にとっては、小児バックトランスファーは不可欠でありますので、研究運航事業の中で実績を積み重ねながらその必要性を行政に働きかけてまいりたいと思います。

 冬期間の札幌丘珠空港を使用した搬送は、例年同様に航空法上の基準の関係と降雪等の影響などにより困難となり、新千歳空港を所管する千歳市消防本部のご理解とご協力をいただきました。コロナ禍にもかかわらず円滑に搬送いただきましたことにこの場をお借りし厚く御礼申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症が令和5年5月8日から5類に移行し、社会活動が活発化することに伴い、メディカルウイングの需要が今後増えていくことが見込まれます。引き続き安全運航に努め、道民の命を守る翼として医療スタッフ、運航クルーと力を合わせて事業を推進してまいりますので、関係各位のご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。